体力を消耗する風邪のせき
風邪の症状の中でも、いちばん長引きやすく、他人にも迷惑をかけてしまうのは、なんといってもせきです。乾いたせき、痰がからんだようなせき、むせ返るようなせきなど、いろいろなタイプがありますが、いずれの場合も早めに治しておくことが大切。こじらせると、気管支や肺まで炎症が進んだり、何か月もせきが残ってしまう可能性があるからです。
激しいせきが出るとき
大きなせきが連続して出る/白っぽい痰が出る/汗が出にくい/のどは渇かない。
防衛反応としてのこのようなせきは、無理に止めないことです。
せきは、風邪のウイルスによって、肺の機能が乱されて起こる症状です。ただ、ゴホンゴホンと大きなせきが連続して出る場合は、体が一生懸命風邪と戦っている証拠。体内からウイルスを追い出して、肺の機能を回復しようとする、防衛反応のせきなのです。
そのため、こういうタイプのせきを無理に止めてしまうと、かえって風邪をこじらせることになります。ゆっくり眠って、体の抵抗力を高めることがなにより大切。食べ物も、発汗作用のあるショウガやネギ入りのおかゆなどがいいでしょう。たくさん食べすぎたり、生ものや冷たいもの、脂っこいものなどを食べてしまうと、消化吸収の作業に手間とって、体によけいな負担をかけることになります。
痰がからんでせきが出るとき
痰がからんだような重く濁ったせきが出る/白く粘った痰が大量に出る/舌に白い苔がべったりとついている。こんなせきが止まらないときは、痰をとる作用をもつ、陳皮(ちんぴ)や杏仁がおすすめです。
風邪をひいて2~3日たつと、痰が異常に増えて、のどにからみ、吐き出そうとするとせき込んでしまうことがあります。これは、肺の機能が乱されたために痰が発生し、その痰がまた肺の機能をじゃましている、という悪循環が起きている状態です。
この場合、痰がとれればせきも落ち着くので、陳皮や杏仁のように、痰をとる食べ物がおすすめです。杏仁はアンズの種のことで、杏仁豆腐に使われていることで有名。ただ、市販の杏仁豆腐は、杏仁が入っていないものも多いので、よく確かめたほうがいいでしょう。陳皮は、せき止め効果のある梅干と合わせて、ごはんのおかずやおかゆのトッピングに。
乾いたせきが続いているとき
コホンコホンと乾いた感じのせきかなかなかとれない/痰は黄色く、少なめ/唇やのどか乾燥している/鼻がつまる。対策としては、大根、はちみつ、梨、ウド、ゴボウなどがお勧めです。
秋や冬など、乾燥した季節に多いせきです。なかなかおさまらないことが多く、長引くと痰に血が混じったり、鼻粘膜が乾燥して鼻血が出ることもあります。
このせきが出るときは、鼻やのどだけでなく、肺までもが乾燥して熱をもった状態になっているので、適度に潤し、炎症を鎮める食べ物が適しています。たとえば、梨。ジャムのように煮詰めたものが特に効果的といわれています。また、せき込むとのどが痛むようなときには、大根がおすすめ。薄味で煮たり、お米と一緒に大根がゆなどにして食べるといいでしょう。また、大根を1cm角に切ってはちみつに漬け、数時間おいて汁を飲むという方法も。生のはちみつには、肺を潤しながら炎症を抑える作用があります。
このほか、ゴボウやフキには、痰をすっきり出し、肺を潤す作用があります。なお、調理するときは、淡泊な味付けにするのがポイント。濃い味や辛い味は、炎症や乾燥をひどくしてしまう原因になるからです。
(文=編集部、監修=呉澤森/呉迎上海第一治療院院長)