連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第20回

慢性片頭痛患者の30%以上が「気分障害」や「うつ病」を併発している?

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うつ病を伴った片頭痛の予防的治療

 頭痛には、急性期の痛い時に内服する「急性期治療」と、頭痛の頻度(回数)や強さを減弱するために内服する「予防的治療」があります。

 うつ病を伴った片頭痛には、その頻度が多いため、予防治療が必要となることが多くなります。これらの予防的治療には、アミトリプチンやパロキセチンの使用がすすめられています。また片頭痛にパニック障害等を伴う場合には、バルプロ酸の効果もあるようです(文献2)。

 そして、このような患者さんには、家族や職場での人間関係、離婚、雇用問題、両親の死などの生活環境での変化や問題も重要です。このような問題を抱えた人は、精神科専門医や臨床心理士と一緒に、認知行動療法などの非薬物療法によって、これらの問題を丁寧に解決することで頭痛症状も同時に改善する可能性があります。

 今回、神奈川県座間市で9人もの殺人事件が発生しました。この人達は、心配事につけ込まれて、連続殺人事件に巻き込まれてしまいました――。

 ツイッターに「自殺を望む書き込み」をして、SNSの中の誰かに助けを求めていたようです。しかし、自殺念慮(自殺したいと思うこと)が気持ちの中にある時点で、うつ病や不安障害にかかっている可能性があります。今、心配事があって頭痛で困っている人は、SNSの中の誰かに助けを求めるのではなく、家族、友人、学校の先生などに相談してください。またお近くのメンタルヘルス科や精神科を、まず受診してください。きっと信頼できる先生にめぐり会えると思います。


●参考文献
1)厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html
2)Maurizio Pompili et al. Psychiatric comorbidity in patients with chronic daily headache and migraine: a selective overview including personality traits and suicide risk. J Headache Pain (2009) 10:283–290
3)De Filippis S, et al. Mental turmoil, suicide risk, illness perception, and temperament, and their impact on quality of life in chronic daily headache. J HeadachePain (2008) 9:349–357.
4) Calati R. et al. Association between lifetime headache and history of suicide attempts
in the elderly. European Psychiatry 41 (2017) 132–139
5) J Trejo-Gabriel-Galan JM et al. Suicide in primary headaches in 48 countries: A physician-survey based study. Cephalalgia. 2017 Jan 1:333102417714477
6) Liu HY et al. Suicide risk in patients with migraine and comorbid fibromyalgia Neurology. 2015 Sep 22;85(12):1017-23.


連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」バックナンバー

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授、近畿大学医学部附属病院神経内科。1992年、近畿大学医学部卒業。近畿大学附属病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、2014年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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