LGBTが理解できない人へ 映画『恋とボルバキア』性別を超えた生き方

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映画『恋とボルバキア』は2017年12月9日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー、ほか全国順次(©︎2017「恋とボルバキア」製作委員会)

 自分の性別に違和感を感じて生き続け、性別適合の手術を受けて戸籍上の性別も変更したが、新しい性にも馴染めず、やはり元の性に戻したい。しかし、性の再変更は認められておらず、生きづらさに苦しんでいる──。

 こんな記事が掲載されたのは、10月30日の朝日新聞。記事内に匿名で登場する40代の元男性は、性別変更後、男性だったときは簡単に見つかった仕事がなかなか見つからず、いまはようやく見つけたパン工場の仕事で働く。

 だが、「精神的に不安定な状態で(性別変更を)申し立ててしまった。このまま生きるのは非常に苦痛で何とか元の性に戻りたい」と話しているという。

 この記事を受けて、11月9日の朝日新聞の読者投稿欄「声」には、「生きづらくて性別変更 私も後悔」という投書が掲載。戸籍上の性別を女性から男性に変えたが、男性同士のコミュニケーションに馴染めず、自分が抱えていた人生の課題や生きづらさは性別変更とは別次元の問題だったと感じて後悔しているという。

いまだ過渡期~日本でのLGBTをめぐる状況

 この一連の記事をどう捉えるか、見解は分かれるだろうが、ある意味では、LGBTへの理解と社会的な認知が進んだ過程で起こるべくして起こったケースだとも言える。

 性別変更が法整備されたことで、自分本来の性を取り戻した人もいる一方で、中には後悔する人も表れてくるのは、ある意味では表裏一体の関係にある。

 このような問題が起こる一方で、フジテレビの「保毛尾田保毛男」問題のような、旧態依然としたLGBTに対する揶揄がまかり通っていることもあわせて考えると、やはり日本におけるLGBTをめぐる状況は、いまだ過渡期にあると考えるのが妥当だろう。

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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