病院での自殺は家族ばかりか看護師の心にも傷を残す (depositphotos.com)
ここ数年の報道で注目されることの多い医療事故。3年前、群馬大学付属病院で手術を受けた患者8名が相次いで死亡した問題は、多くの人にとって未だ記憶に新しいところだろう。
一般的に医療事故とは「医師や看護師のミスが起因するもの」と考えられている。しかし、米国医療施設評価認証機構(JCAHO)の医療事故報告制度の中で最も多い重大事故は「患者の自殺」だという(2006年)。
今年8月、わが国の医療の評価・改善を進める第三者機関「日本医療機能評価機構」も、「入院患者の自殺は深刻かつ主要な医療事故である」として、各病院に対し自殺事故のリスクを低減させることに力を注ぐよう求める提言を公表した。
過去3年の間に「精神科病床がない一般病院の約2割で入院患者が自殺」していたことが、同機構の調査によって明らかになったからだ。
一般病院の自殺者の5割が「がん患者」
同機構は2015年の秋、全国の1376病院を対象に調査票を郵送で送り、2012~2014年度の自殺の発生状況などを質問。38%の529病院が回答した。
その結果、「精神科のベッドがない432の一般病院のうち19%にあたる83病院で計107人の患者が自殺」していた(未遂は除く)。病気別では「がん」が52人で約半数を占め、消化器や脳神経の病気がともに8人で続いた。
自殺した患者のうち46人に「がんによる痛み」などの身体症状の悪化がみられ、31人で「死にたい」など自殺に関連する発言があったという。
一方、精神疾患がある患者の自殺リスクは高く、「精神科病床がある一般病院で67%」「精神科病院では79%」で自殺が起きていた。精神疾患では統合失調症が最多だったという。
また、自殺者の中で入院中に精神科を受診していたのは、「精神科病床のない一般病院で16%」ほど。「精神科病床がある病院の一般病棟で自殺した患者については、わずか8%」しか精神科を受診していなかった。
3群とも自殺の手段として最も多かったのは「縊首(いしゅ)」で、次いで高所からの「飛び降り」。また、病室内で使用されている医療機器(機器そのものや電源コード・チューブ類)、衣類や日用品、売店で購入可能な文具や刃物を使用した例も見られた。
日常的な自殺予防対策は、精神科病院で91%、精神か病床のある一般病院で83%が「している」と回答した一方、一般病院では53%にとどまった。