ALS患者の人工呼吸器装着の是非〜映画『君がくれたグッドライフ』に見る安楽死・尊厳死の選択

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映画『君がくれたグッドライフ』©2014 Majestic Filmproduktion GmbH / ZDF

 2年ほど前、「アイス・バケツ・チャレンジ」という募金イベントが世間をにぎわせた。これは、頭から氷水をかぶる動画をSNS上で公開し、次の人を指名することで、の治療研究を支援しようというもの。イベントがひとり歩きした感も否めないが、ALSの認知度は高まったといえるだろう。

 ALSとは、筋肉を動かすための神経(運動ニューロン)が壊れて命令が伝わらなくなり、筋肉が痩せて力が入らなくなる病気だ。手足を動かしにくい、しゃべりにくい、飲み込みにくいなどの症状があり、進行すると呼吸障害が起こる。

 この時点で患者は人工呼吸器装着の選択を迫られるが、これは単なる延命のための装置なのか、あるいは周囲に負担はかけるが新たな人生へのきっかけになるのか、いずれ体が動かなくなり意思伝達も困難になる患者にとって、その選択はかなり難しいものとなっている。

24時間介護の必要性に迫られる呼吸器装着

 5月21日公開のドイツ映画『君がくれたグッドライフ』の主人公ハンネスはALS患者だ。彼は人工呼吸器の装着を拒否するだけでなく、積極的安楽死(医師による致死量の薬剤投与)を選択する。

 ここ半年で症状が悪化したハンネスは、毎年恒例となっている仲間たちとの自転車旅行の行き先をベルギーに決める。それは、ドイツでは合法化されていない安楽死の処置を受けることができるからだ。36歳のハンネスが葛藤しながらもこうした決断を下したのは、同じ病気で苦しんだ父親を見てきたこと、家族に迷惑をかけたくないこと、そして寝たきりで管につながれた姿を晒したくないことが理由だった――。

 現在、ヨーロッパでは、スイス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクで積極的安楽死が認められているが、ハンネスの住むドイツでは処罰の対象となる。一方、日本では、薬剤による安楽死はもちろん、医師が患者の呼吸器を外すという行為も認められていない。

 人工呼吸器をつけなければ余命は数年だが、装着すると10年以上、生きることもある。呼吸器を付けても病状は進行し、痰吸引や体位変換などが必要になるため、24時間の介護は必至である。

 ドイツでは、介護度の高いALS患者の場合、社会保障や健康保険などでヘルパーの費用をすべてまかなえるが、在宅ヘルパーの数は慢性的に不足している。一方、日本では、医師や看護師による指導のもと、ヘルパーによるたん吸引が認められているが、そうした事業所やヘルパーの人数はやはり少ない。また、公的支援が十分に受けられない場合もある。

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