シリーズ「中村祐輔のシカゴ便り」第21回

腸内細菌とがん発症リスクは解明されるか?重要度を増す「免疫系のゲノム研究」

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免疫系のゲノム研究が次世代テーマだ!(depositphotos.com)

 シカゴもようやく平年並みの気温になり、朝の出勤には真冬のコートが必要となってきた。明日の最低気温予想は0度であり、氷点下になる可能性もある。寒さは苦手だが、6度目の冬を迎えるので、体の備えも、心も準備もできている。

 しかし、懸念されるのは治安の悪化だ。今までもこの近辺で路上強盗などはあったが、ほとんど日没後、それもかなり遅い時間帯だったのだ。しかし、最近は数も増え、しかも、日中に起こることが増えてきた。今朝も(午前10時過ぎ)、真冬に通勤で利用するバス停から50メートルくらいのところで強盗があったと、連絡が来た。2週間前には、自宅アパートの駐車場入り口近くでも強盗があったので、不安が増している。

全身の免疫と腸内細菌は明らかに関連性がある

 そして、今日、腸内細菌とがんの発症リスクとの関連を調べるというテーマのセミナーがあった。

 内容は期待はずれだったが、腸内細菌の種類や数が、全身の免疫システムに影響を及ぼすのは確実だ。ちなみに、どの程度の種類の細菌が腸管内に存在しているのか調べてみたが、100種類程度と記載しているものから、1000種類程度のものもあり、はっきりしない。総数も百兆個から数百兆個と違いがある。総数に関しては、個体差も、個人内変動もあり、この程度の差は誤差範囲か。

 全身の免疫と腸内細菌の関連を示す例は多数ある。たとえば、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)の場合、食事の種類が病状の悪化・改善に関連することが知られているし、多くの場合、絶食にすると症状は改善する。ただし、これらのケースでは、全身性というよりも、消化管内での細菌の変化が、腸管内局所の免疫環境を変化させただけかもしれない。

この種の疾患では、他人の消化管内の細菌を注入する治療法が効果を挙げていることからも、腸内細菌と免疫の関連は明らかだ。寄生虫を飲ませると、アレルギー疾患が改善すると主張していた研究者もいたし、腸内細菌の存在は侮れない。

 しかし、多くの論文などを読んでも、DNAシークエンサーを利用することが第一義的で、研究の目的がはっきりしないような気がする。

 マウスの腸内細菌を調べた論文もあるが、マウスでは、餌は放射線照射で殺菌されているし、免疫系遺伝子の多様性も限定的である。人は絶えず病原体や化学物質などに暴露されているが、マウスはきれいな環境で飼育されている。体の大きさは3000対1だが、おそらく、実際の免疫の多様性は、人の方がマウスよりも百万倍以上も複雑に違いない(この百万倍という数字は、私の直感であって、科学的な計算根拠はない。HLAもきわめて多様だし、ひょっとすると、もっともっと複雑かもしれない)。

中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長を経て、2012年4月より現職。

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