<セルフモニタリング>どんな食事が今の気分をつくったか?
とはいっても、特に男性の一人暮らしでは、普段から栄養にまで気を配るのが難しい場合もあるだろう。そんな人に向けて、西医師は食生活のセルフモニタリングを提案する。
「魚を食べて揚げ物を控えるのはいいことですが、ときどき唐揚げを食べるくらい構わない。魚を食べることにこだわりすぎるのではなく、食事と気分の関係を<セルフモニタリング>することが大切です」
「食べたものの栄養素だけではなくて<食べた量><食べる速さ><お酒の飲み方>などを振り返ってみるのです。たとえば、お腹が減っていないのに、イライラや不安を紛らわせるためにたくさん食べて、食べることで満足感を得るというパターンを持っている人は比較的多い」
「食事がどのように気分に影響しているかに目を向けていくと、自分にとっての<いい食生活>が経験からわかるようになるでしょう。理想的なのは、<カラダがいま何を求めているか>を自然に感じとって食事できる生活ですね」
本当にカラダが必要としている栄養素、食事に気づく感覚を取り戻していくことが、うつの予防にもつながっていくのだ。
(取材・文=里中高志)
西大輔(にし・だいすけ)
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部システム開発研究室長。2000年、九州大学医学部卒。国立病院機構災害医療センター精神科科長を経て2012年より現職。2016年より東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻精神保健政策学分野連携講座准教授を併任。著書に『うつ病にならない鉄則』(マガジンハウス)がある。専門:精神保健学、うつ病・PTSDの予防、栄養精神医学、産業精神保健、レジリエンス。