オメガ3脂肪酸は脂肪分が多い魚に多く含まれる(shutterstock.com)
オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)はマグロなどの脂肪分が多い魚や、その他の海産物、ナッツ類などに含まれている不飽和脂肪酸である。血中の中性脂肪や悪玉コレステロールの低減、脳神経の活性化をはじめ、さまざまな健康効果が注目されており、サプリメントも大人気だ。
このサプリメントが、うつ病の症状を改善する可能性も、これまでにいくつかの研究で示唆されてきた。しかし、「Cochrane Library」オンライン版に11月5日掲載された論文で、オメガ3脂肪酸サプリメントの摂取がうつ病治療に役立つとのエビデンスは、「現時点ではない」ことが示された。
オメガ3脂肪酸がうつ病に効くというエビデンスはなかった
今回発表された論文は、英ボーンマス大学のKatherine Appleton氏の研究チームが、オメガ3脂肪酸の大うつ病(大うつ病性障害)に対する効果をランダム化比較試験で検討した論文を集め、一括して解析を行った結果についてのものである。
対象となった試験は26件、うちプラセボと比較した試験が25件、抗うつ剤と比較したのが1件であった。対象となったうつ病患者は計1400人超である。
その結果、オメガ3脂肪酸サプリメントを摂取した患者群では、プラセボ群に比べて症状の程度を示す疾患スコアがわずかに低下していることが示されたが、スコアの差はわずかなものであった。解析対象となった26件のうち、十分に規模が大きく、適切にデザインされたものは3件のみであり、大半は小規模研究で、バイアス(偏り)があることがわかった。抗うつ薬と比較した1件の研究では、治療効果に差は認められなかった。
Appleton氏は、「オメガ3脂肪酸では、プラセボと比較して、わずかから中等度の改善効果が認められたが、この効果の大きさが、うつ病患者にとって意義のあるものである可能性は低い。解析対象となった研究の規模や方法からみても、エビデンスの質は全体に高くはない。よって現時点では、大うつ病治療に対するオメガ3脂肪酸の効果を判断するために十分な高品質のエビデンスは存在しないといえる」と述べている。