患者のタイプによって保湿剤を使い分ける
須階医師がアトピー性皮膚炎の患者に最初に行うのは、カウンセリングである(第1回「28年にわたるアトピー治療で見えてきた心と皮膚の深い関係」参照)。そして、症状に合わせて保湿剤を処方する。
「赤みがあるか、どの程度乾燥しているか、かゆみが強いかなどは、ひとりひとりで違います。タイプによって保湿剤を使い分けることが重要です。乾燥が激しくかゆみがある場合には、私が開発したセラミドの前駆体(セラミドが生成される前の段階にある物質)配合の保湿クリームを使うこともあります」
須階医師は、pH2.7以下の強酸性で低刺激の「バリアコート水」も開発。保湿で症状が落ち着いたら、皮膚を鍛えるという観点からバリアコート水を使用している。「皮膚に適度な刺激を与えることで、ストレスなどの悪影響にも耐えられる状態まで改善する効果が期待できます」と須階医師は言う。
「アトピーの患者さんに接してきて思うのは、ご自分の皮膚を観察していないということ。どんな治療法がある、どこにクリニックがあるなど、外部の情報に気を取られすぎています。それよりも皮膚をじっくりと見てください。正しいスキンケアで、日々、症状は改善していきます。そして3カ月ぐらいで目に見える変化が現れるはずです」
(取材・文=森真希)
須階富士雄(すがい・ふじお)
芝皮フ科クリニック院長。 1962年、東京都生まれ。89年、聖マリアンナ医科大学を卒業後、東京慈恵会医科大学皮膚科に入局。東京慈恵会医科大学附属柏病院・町田市民病院での勤務を経て、96年に芝皮フ科クリニックを開院。
森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。