オリックスが「潰瘍性大腸炎発症」で選手を解雇~<腸の病気>は食生活の影響か?

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10数年前から若者たちに急増しだしたクローン病

 潰瘍性大腸炎に似た腸の疾患に「クローン病」があります。クローン病も難病指定されており、15~25歳の若者たちに急増しています。潰瘍性大腸炎と同じく国の「難治性炎症腸管障害研究班」の研究対象になっています。

 症状は、潰瘍性大腸炎同様、腹痛、全身怠惰、下痢、発熱、体重減少、貧血、イレウス症状、腹部腫瘤、腹膜炎症状、痔などが主なものです。原因も明確にはなっていませんが、食生活の影響が大きいという点も、潰瘍性大腸炎と共通しています。

 クローン病が若者たちに急増しだした10数年前、クローン病の治療・研究に長年携わってきた兵庫医科大学(当時)の福田能啓医学博士に取材をしましたが、福田医学博士は「ファストフードがクローン病に関係している」と、指摘しました。

 「クローン病患者の食習慣と、性別や年齢が同じでクローン病ではない人の食習慣を比較した国の研究班の調査では、クローン病の患者さんがファストフードをよく食べていた」という結果が出ています。

 具体的にはハンバーガーやホットドッグ、フライドチキン、インスタント麺、スナック菓子、チョコレート、ケーキなどをよく食べていると、3倍くらいの比率でクローン病になりやすいと推測されています。

 この他、細菌やウイルス、経口で摂取される食物中の食品添加物、化学物質、遺伝的要因、肉などに含まれる飽和脂肪酸や糖分の摂り過ぎによる代謝異常もクローン病に関与しているのではと見られています。

 ただ、私たちは食事内容がもっとも重要なファクターではないかと考え、治療中の患者さんには、ファストフードを食べないように指導しています」(福田医学博士)

2名もの難病指定の腸疾病患者を出したオリックス球団の健康管理・栄養指導は?

 それでは、1年間に2名もの難病指定の腸疾病患者を出したオリックス球団の健康管理・栄養指導は、どうだったのか?

 一昨年(2015)12月の契約更改時、選手会長(当時)の伊藤光捕手がオリックスが主催するナイトゲーム後に用意している夜食について、「菓子パンが多い。栄養は大丈夫なのか」と、球団側に不満をぶつけたといいます。

 プロ球団はどこでも、ナイトゲームの終了後に簡単な夜食を用意しています。サンドイッチやパスタ、蕎麦、うどん類のところが多いようですが、なんとオリックスはコンビニで売っている菓子パンでした。そのため、選手たちの間で「いくらなんでもひどすぎる」との不満が蓄積していたようです。

 さすがに、昨年の春のオープン戦から菓子パンオンリーの夜食はなくなったと報道されましたが、新人選手が入る寮の食事内容、また、日頃の食事指導がどうなっているのか非常に気になります。

 それから、潰瘍性大腸炎やクローン病で苦しんでいる若い人の励みになるように、オリックス球団は中道選手を戦力外で解雇せず、完治するまで暖かく見守ってほしいものです。
(文=郡司和夫)

*編集部注:記事公開後、「球団の健康管理・栄養指導」をクローズアップした記事タイトルが読者への誤解を与えたため、修正いたしました。

郡司和夫(ぐんじ・かずお)

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法政大学卒。食品汚染、環境問題の一線に立ち、雑誌の特集記事を中心に執筆活動を行っている。主な著書に『「赤ちゃん」が危ない』(情報センター出版局)、『食品のカラクリ』(宝島社)、『これを食べてはいけない』(三笠書房)、『生活用品の危険度調べました』(三才ブックス)、『シックハウス症候群』(東洋経済新報社)、『体をこわす添加物から身を守る本』(三笠書房・知的生き方文庫)など多数。

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