セレンの欠乏症と過剰症について
セレン欠乏症になると、筋肉痛、不整脈、爪の変色、貧血、心筋障害、動脈硬化、甲状腺の機能低下などを誘発される。経口摂取ができず、高カロリー輸液のみで栄養を補っている患者では、特に欠乏しやすい。京大病院の症例でも、セレンが欠乏し、上記の如き症状を呈したため、セレン注射剤が含まれた点滴を行ったものと思われる。
セレン過剰症では、まず脱毛、嘔気、嘔吐、下痢、脱力感を訴えることが多い。さらに病状が増悪すると、吐血、急性腎不全、肝機能障害、神経障害を引き起こすことになる。京大病院における女性患者の背中の痛みは、心筋障害が誘発されたことによるものと推察される。
また最近のサプリメント、特に外国からの輸入品では、含有成分量は不確かな製品も見受けられるため、過量服用しないよう心がけることが必要である。
医療スタッフの判断ミスが重大な患者への悪影響を及ぼす
急性薬物中毒は、向精神薬や化学薬品などの大量服用により引き起こされ、個々の患者およびそれにかかわる医療スタッフ、特に治療する医師がともに密接に接することにより、未然に対策を講じることも可能である。
しかし、院内製剤の調整に関する医療ミスは、患者サイドでは防ぎようがないのが現状である。医療施設での製剤の調整工程やスタッフの厳重な教育・管理が必要であろう。