連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第40回

処方薬の濃度738倍で患者死亡 患者側で防ぎようがない院内製剤の医療ミス

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セレンの欠乏症と過剰症について

 セレン欠乏症になると、筋肉痛、不整脈、爪の変色、貧血、心筋障害、動脈硬化、甲状腺の機能低下などを誘発される。経口摂取ができず、高カロリー輸液のみで栄養を補っている患者では、特に欠乏しやすい。京大病院の症例でも、セレンが欠乏し、上記の如き症状を呈したため、セレン注射剤が含まれた点滴を行ったものと思われる。

 セレン過剰症では、まず脱毛、嘔気、嘔吐、下痢、脱力感を訴えることが多い。さらに病状が増悪すると、吐血、急性腎不全、肝機能障害、神経障害を引き起こすことになる。京大病院における女性患者の背中の痛みは、心筋障害が誘発されたことによるものと推察される。

 また最近のサプリメント、特に外国からの輸入品では、含有成分量は不確かな製品も見受けられるため、過量服用しないよう心がけることが必要である。 

医療スタッフの判断ミスが重大な患者への悪影響を及ぼす

 急性薬物中毒は、向精神薬や化学薬品などの大量服用により引き起こされ、個々の患者およびそれにかかわる医療スタッフ、特に治療する医師がともに密接に接することにより、未然に対策を講じることも可能である。

 しかし、院内製剤の調整に関する医療ミスは、患者サイドでは防ぎようがないのが現状である。医療施設での製剤の調整工程やスタッフの厳重な教育・管理が必要であろう。


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横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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