ビタミンDやカルシウムのサプリを飲んでも骨折は防げない(depositphotos.com)
昨年(2016年)4月、テレビ朝日の宇賀なつみアナウンサーが、花見中の不注意で転倒し右肘にヒビを入れた。次いで6月には、漫才師「NON STYLE」の石田明さんが路上での「エアサッカー」で転倒し右上腕を骨折した。
相次いだ2人の転倒劇、いずれも生放送出演での痛々しい釈明姿が報じられたので記憶に残ったが、今年は今年で「転倒による有名人の骨折」案件が不思議と多発している。
テレビ東京の福田典子アナは顎、海外ロケ中の漫才師「おぎやはぎ」の小木博明さんは右鎖骨、舞台で転んだ研ナオコさんが右大腿骨頸部ならば、ツアー中に足を骨折したのがaikoさん。作家の内館牧子さんも躓いて右足を――と、職業もさまざまならばケガの箇所も十人十色という有り様なのだ。
さらに黒柳徹子さんが1か月前の骨折(→手術→車椅子生活)をインスタグラムで衝撃の自己申告をしたり、山瀬まみさんは出演番組の収録前にスタジオでコケて右膝蓋骨と左第5中足骨を折ったりと、今年はまだ数人が転倒骨折リスト入りしそうな勢いだが……。
折も折、海の向こうでは9月26日、米国予防医療サービス専門作業部会(the U.S.Preventive Services Task Force:USPSTF)が、「①65歳以上の健康な高齢者の転倒予防に関する勧告」と「②骨粗鬆症による骨折歴のない成人におけるサプリメント使用の骨折予防に関する勧告」の各草案を発表して話題を呼んだ。
運動に勝る<転倒予防策>はなし
いずれの勧告案もこれまでのエビデンスレビューに基づいて纏められたものだが、①案では「運動」を「転倒リスクが高い高齢者に中等度の効能がある」と推奨する一方で、「ビタミンDサプリメントの摂取」に関しては否定の見解を明確に示している点が目をひく。
また、②の対象成人に関しても、ビタミンDやカルシウムのサプリメント摂取が「骨折予防のため」である点においては「十分なエビデンスがない」として推奨していない。その意味では、健康効果を信じて日々飲み続けているサプリメント信仰者にはかなりショックな勧告だろう。
高齢者に向けた①案の場合、具体的な推奨運動の種類にまでは言及していないが、草案執筆者の一人であるAlexander Krist氏(米バージニア・コモンウェルス大学准教授)は、こう語っている。
「専門家の指導下で行なうバランス能力や歩行能力などを向上させる運動は、転倒リスクの高い高齢者の(予防の)役に立つだろう」
だが、こうして今回の勧告案が、現場の医師陣にリスクのチェックを求めている点については異論がないわけでもない。たとえば、Chris Sciamanna氏(米ペン・ステート大学医学部教授)の見解はこうだ。
「医療機関側の本音からすれば、診療時間が余計に増えるだけであり、収益にもつながらない。正直、勧告案が謳う医師によるリスク評価が普及するどうかは疑わしいと言える」