「安価なタバコ」が乳児を殺す?(depositphotos.com)
10月5日の東京都議会で、都民ファーストの会と公明党が共同提出した「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」が賛成多数で可決・成立した。「私生活の空間での喫煙」に歯止めをかける都道府県条例としては全国初となる(施行は2018年4月)。
同条例は、子どもがいる自宅内や自動車内などでの禁煙を保護者の「努力義務」とし、受動喫煙防止措置のない施設にも子どもを立ち入らせないよう課しているが、いずれも「罰則」はない。
一方、海外に目を転じれば、タバコの値上げに伴なって「乳児の死亡率」が減少している可能性が高いとされる最新の知見が公表され、耳目を集めている。
話題の研究報告は、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのFilippos Filippidis氏らによる、興味深い示唆だ(『JAMA Pediatrics』9月18日オンライン版に掲載)。
今回の研究は、2004~2014年にわたる欧州各国(EU加盟の23カ国)のデータに基づいて実施されたもので、10年間のタバコの値上げ実態と乳児の死亡率の推移を比較検証した。
まずは上記の期間中、「出生1000人あたりの死亡率が4.4人から3.5人へと減少」している事実がデータ上から読み取れた。さらに「タバコ1箱あたりの平均価格が1ユーロ(約132円)上昇するごとに、値上げされた同年の乳児死亡率が1000人あたりでマイナス0.23人、その翌年もマイナス0.16人と減少傾向」が認められた。
安物のタバコを吸って乳児の死亡率がアップ
しかし、単純に「タバコの値上げ=乳幼児の死亡率減」といいことづくめでリンクしないのが、<健康に良くないのに国が販売を許可している>この嗜好品のなんとも厄介な部分である。事実、今回の研究でも次のような皮肉な現象が明らかになった。
それは「その国で最も安価なタバコ製品の価格と、すべてのタバコ製品の平均価格(中央値)の差額が、拡大すればするほど、乳幼児死亡率はむしろ上昇傾向をみせる」という共通項だ。
つまり、折々の値上げに伴い、経済的に追いつけない(それでも止められない)愛煙層が、最安価ブランドへ一極集中しているというわけだろう。
具体的には、すべての調査対象国のデータに基づいた解析の結果、「最低価格と平均価格の差が10%増大する度ごとに、翌年の乳児死亡率が出生児1000人あたりで0.07人の増加」という数値が示された。