米国ではホスピスの「平均利用期間」は12.5日、日本では39.5日(depositphotos.com)
米イェール大学内科学のThomas Gill氏らの研究チームは、高齢者が死を迎える前に経験する疼痛や抑うつなどの症状を緩和する「ホスピスケア(=緩和ケア)」を受けるのは、「死の直前」が多い実態を米国の前向きコホート研究によって確認し、その成果を『Journal of the American Geriatrics Society』9月12日オンライン版に発表した。
発表によれば、研究チームは1998~1999年に登録され2014年12月までに死亡した地域住民562人のデータを分析。登録時の年齢は70歳以上で、全ての高齢者が健康で自立した生活を送っていた。その後、約16年間にわたって18カ月ごとに自宅で健康状態の評価を行い、月1回電話で聞き取り調査を実施。死亡1年前の平均年齢は86.6歳だった。
その結果、対象者の多くが死亡するまでの6カ月間に、疲労、疼痛、吐き気、抑うつ、不眠、めまいなどの症状を経験したことから、家事、買物、食事の支度、服薬、金銭の管理、階段の昇降、歩行、運転、小さな荷物の持ち運びなどの日常生活動作(ADL)が困難になり、ホスピスケアを受ける必要性が高まった。
しかし、「死亡直前の1年間にホスピスケアを利用した高齢者」は43.4%、「平均利用期間」は12.5日に止まったことから、「死亡直前にホスピスケアを利用し始める高齢者が多い」実態が明らかになった。
なお、ホスピスケアを利用した高齢者は、利用しなかった高齢者よりもわずかに高齢で、認知機能の低下が多く見られた。また、がんや認知症の患者の利用率は高かったが、終末期の高齢者に高頻度に見られるフレイル(虚弱)の患者の利用率は低かった。