僧侶が普段着のままで患者と語らい死をタブーにしない仏教ホスピスとは?

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あそかビハーラ病院で仏教ホスピス(ビハーラ活動)を行っている僧侶たち

 僧侶が僧衣を脱ぎ普段着のままで、患者と談話室で一緒にパズルを楽しむ――。あそかビハーラ病院(京都府城陽市)では、そんな光景が珍しくない。「終末期の病に苦しむ人々に寄り添いたい」と、2008年に浄土真宗本願寺が単独の取り組みとして開設した独立型緩和ケア病院だ。医療者のチームに僧侶が入り、仏教ホスピス(ビハーラ活動)を行っている。

 あそかビハーラ病院には、ご本尊・阿弥陀如来を安置したホールを設置しているが、入院患者に宗教を問うことはなく、緩和ケアを求める人すべてに門戸を開いている。患者たちの苦悩に寄り添おうとして7年前から開始した仏教ホスピスは、前々回に詳述した「西本願寺医師の会」が目標とする終末期医療の在り方だ。同病院のこれまでの取り組みから、仏教ホスピスの必要性が見えてくる。

僧侶が徹底して生きている人のことを思い遣る

 昭和大学病院の緩和ケア担当医を経て、2009年からあそかビハーラ病院の院長に就任した大嶋健三郎氏は、「以前の病院では、宗教者なしで緩和ケアを行い、なにひとつ困ったことがなかった。でも医療者だけのチームで見てきた患者さんたちより、ここの患者さんやご家族のほうが笑顔が多く、物事を受け入れてくれやすい。僧侶が常駐していることで、緩和ケアの質が非常に上がってきています」と話す。

 緩和ケアの質の向上に貢献しているといわれる僧侶。病院内での役割はどのようなものだろう?

「患者さんたちは、これまで『もう先がない』『病気は治らない』など、傷つきながら、様々な制約を受けてきた。その中で日常生活のほんの少しの喜びもわからなくなり、嬉しさの表現ができなくなっている。悲し過ぎて泣けない人も多い。そんな患者さんたちに、嬉しい時や悲しい時には泣いてもいいということを思い出してもらいたい。その役割が僧侶なのです。例えば最初の声かけが『お散歩に行きましょうよ』。これは医師にできないことです。医療的なことを一切言わずに、出会った瞬間から、患者と純粋に向き合ってくれるから、医師である私にとっても、僧侶たちはかけがえのない存在です。彼らのファーストアプローチで受けた印象が、治療プランにも影響を与えてくれますから」

 僧侶は死後にお世話になるもの、という考え方を、世間のほとんどの人が持っている。ところが、ビハーラ病棟では、僧侶が徹底して生きている人のことを思い遣ることが日常で行われている。

「あそかビハーラ病院では、肩書に関係なく、まず人として関わって初めて僧侶として、また医師としての業務が始まります」

死をタブーにせず、生を全うする

 痛みを取るだけでなく、自分はなぜ死ぬのか、生きてきた意味は何なのか。その苦悩に真摯に向き合えるのは僧侶だけ。これが「西本願寺医師の会」が推進する「人間らしく生き切る医療」だ。

 あそかビハーラ病院で200人以上の患者を看取った常駐僧侶の一人、山本成樹さんにとって、忘れられない思い出がある。80代半ばの男性患者と菜園のトマトを収穫していた時に、ふっと患者が呟いた。

「辛い日の方が多かったけど、無駄なことがなかった。あの日々が、わしの人生をここまであそかビハーラ病院が導いてくれたんや」

 死をタブーにせず、生を全うする。あそかビハーラ病院の取り組みは、始まったばかりだ。
(取材・文=夏目かをる)

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