悪玉菌優位の腸内では炎症が生じやすく、「がん」が発症しやすい
また、「脂肪(肉類)の摂りすぎにより悪玉菌優位の状態になって、腸内環境が悪化している人が多い」と後藤医師は語る。
肉類を食べすぎると、消化するために肝臓から胆汁酸が大量に分泌される。胆汁酸が小腸で吸収されず、大腸に流れ込む。大腸内では悪玉菌により二次胆汁酸に変化し、これが大腸粘膜に作用して細胞増殖の制御システムを乱すなどの作用がある発がんの「プロモータ」になると考えられている。
さらには「腸内に乳酸菌が不足していると、悪玉菌など別の菌が棲み着くようになる。すると免疫はその菌を『異物』と見なして、長期的な戦いが続く。その上、ブレーキ役のTレグが少ないと、絶えず腸壁に炎症が生じている状態になり、長い時間の間にがん化する可能性が高くなる」と後藤院長は解説する。
炎症の「面積×時間」が「がん化の指数」なのだという。つまり、広い面積に長期間に渡って炎症が起きているとがんが生じやすい。こうしたしくみ(機序)により、近い将来、大腸がんは日本人のがん死亡率第1位になると予想されている。
母親からの腸内細菌を受け継ぎにくくなっている現代人は、意識して乳酸菌を摂取することが免疫の暴走を防ぐことになる。アレルギーやがんの予防のためには不可欠といえる。
腸と脳がトリプトファンを奪い合う!?心の健康にも腸が深く関係する
うつに悩む人は多いが、実は腸内環境とも深い相関があるのだという。
「イライラしていると下痢をしやすいし、反対に便秘になるとイライラや頭痛が生じたりする。つまり腸と脳は切っても切れない関係(脳腸相関)にある。決して『脳が主』で『腸が従』の関係ではない」と後藤院長は語る。
腸は、独立した神経ネットワークを持っており、俗に「幸せホルモン」と呼ばれる神経伝達物質セロトニンは、98%が腸で産生されているとされる。
「セロトニンの材料となるのは『トリプトファン』だが、脳と腸はトリプトファンの取り合いをしている。たとえば、腸に過敏性腸症候群や便秘、下痢などのトラブルがあると、腸の動きを整える為にセロトニンを大量消費する。腸はセロトニンを生み出すために大量のトリプトファンを必要とするので、脳にまでトリプトファンが回らなくなる。すると脳でセロトニンが作られにくくなり、うつ状態になるのではないか」と後藤院長は説明する。
つまり腸を健康に保つことが、うつ状態の予防や改善にもつながる。心の健康のためには、整腸作用のある乳酸菌を摂取することで、セロトニンの過剰消費にストップをかけたい。
ここで取り上げたもの以外にも、「自律神経を整える」「生活習慣病を予防・改善する」「血液をさらさらにする」「口腔環境を改善する」などの効果が、乳酸菌にはある。どのような乳酸菌を、どのように摂取したらいいのかは、先に紹介した後藤医師の著書『乳酸菌がすべてを解決する』に詳述されているので、チェックしてみてほしい。
(取材・文=渡邉由希/医療ライター)