結婚相手とは早い時期から、金銭感覚について話し合う機会を設けるべき(depositphotos.com)
昔から「愛想尽かしは金から起きる」なんてコトワザがある。金回りが立ち行かなくなると途端に、男女仲が悪くなる。そのままならば「金の切れ目が縁の切れ目」となる。
ネットショッピング全盛の現代であれば、「喧嘩は注文履歴から起きた」なんて夫婦も少なくないだろう。節約家と浪費家の夫妻がアカウントを共有していれば、なおさらだ。
しかし、どうやら実際の浪費額の大小などよりも、夫が妻のことを内心で(相変わらず金遣いが荒いオンナだ……)と感じているだけでも、夫婦関係は悪化するようだ――。そんな可能性を示唆する研究報告が『Journal of Financial Planning』5月号に載った。
「金銭」と「家庭不和」の関係
金銭をめぐる夫婦間の火種がやがて家庭不和の原因へと引火してゆくのは、なにも米国カップルに限ったことではないだろう。
一昨年(2015年)、30~40代の既婚日本人男性200人に訊いた「夫婦喧嘩の原因」ランキング(アイリサーチ調べ)でも、「お金の使い方に関して」は堂々の(?)1位を占めた。そう、世の大半の夫婦に「金持ち喧嘩せず」なんて馬耳東風みたいなのだ。
しかも、研究を主導した米ブリガムヤング大学のAshley LeBaron氏によれば、夫婦仲悪化の主因は、妻側が現実の買い物で費やしている金額や、その夫婦の収入とも関係なく、夫側が上記のような悪感情を抱いてしまっているという内面の問題にあるようだ。
金銭をめぐる夫婦間対立sの要因を探求するため、LeBaron氏ら研究陣が用いたのは、2007年以降実施されている家族関係についての調査プロジェクトから得られた基礎データだ。
調査対象は約700世帯であり、夫婦の平均年齢は45~46歳、結婚年数は平均18年という酸いも甘いも体験済みの男女層である。
今回の主題に絞り込んで分析を進めた結果、「金銭をめぐり夫婦間で対立することがある」と回答した層の背景には「経済的な不安」や「低収入」という想定内のシビアな現実性があり、「子どもの数が3人以上」という傾向も読み取れた。
だが、研究陣が注目した対立要因の一つが「妻は浪費家だと感じている」という夫側の回答であり、その彼岸には当然のごとく「夫から浪費家だと思われていること」を対立理由にあげる妻層が存在していた。
つまり、「実際の浪費額をとがめ」たり、「日頃の収入面への不満が爆発」してというよりは、むしろ夫と妻のそれぞれが、配偶者の消費行動を潜在的にどのように捉えているか――いわば「夫婦間で言い出しかねている感情面」にこそ、最大の対立要因が認められたという次第だ。