壊れた静脈を「接着剤」でふさぐ!?(写真提供:北青山Dクリニック)
体への負担が非常に少なく、治療時間も短い次世代の治療法が注目を浴びつつある。それが「グルー治療」だ。血管内にカテーテルを挿入して、医療用の瞬間接着剤を注入して患部の静脈をふさぐ。これまでの「下肢静脈瘤」の治療概念を大きく塗り替える可能性があるグルー治療とは、いったいどのようなものなのだろうか?
下肢静脈瘤とは? 治療法は?
下肢静脈瘤とは、太ももやふくらはぎ、膝の裏に、こぶのような膨らみや、網目状・クモの巣状の青黒い血管がうねったり、浮き出たりするもの。
静脈血は心臓に向かって、上へ上へと断続的に流れているが、血液が逆流しないよう「ハの字型」の逆流防止弁がついている。その弁が何らかの理由により壊れると、その場所に血液がよどみ溜まり、瘤(こぶ)などを形成してしまう。
命にかかわる疾患ではないが、脚が重い、だるい、かゆい、こむら返りが頻繁に起こるなどの症状に悩む人は多い。もちろん、脚の裏側がデコボコになるなど「見た目」の問題も切実だ。
現在、下肢静脈瘤に対して医療機関で行われている治療法には、おもに3つある。
1つめは、静脈瘤ができている血管に硬化剤を注入し、静脈自体をふさぐことで瘤をつぶす「硬化療法」。2つめが、弁が壊れた静脈そのものを引き抜いてしまう 「ストリッピング手術」。3つめが、レーザーファイバーを患部の静脈に挿入し、血管の内側からレーザーで静脈を焼いてふさぐ「レーザー治療」だ。
レーザー治療には、健康保険が適応される波長1470ナノメートルの機器と、静脈をふさぐ処理効率が高く痛みや治療時間を短くできる2000ナノメートルの機器がある。こちらは自費診療となる。硬化療法とレーザー治療は、日帰りでの治療が可能だ。また静脈瘤がある血管をふさいでしまっても、他の静脈が血液を心臓に戻すので全く問題はない。
現在、主流となっている治療法はこのレーザー治療だが、数年以内には 「グルー治療」が台頭してくるのは必至だ。 下肢静脈瘤に対しての「グルー治療」は欧米ではすでにかなり普及しており、有用性は高周波レーザーでの治療と同等かそれ以上とされている。
ちなみに下肢静脈瘤の治療は何科を受診すればいいかといえば、血管外科の専門医が治療を行う医療機関を受診してほしい。