「植物油」を摂ればコレステロール値が下がり「心血管疾患」の発症リスクを約30%が減少

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植物油のメカニズム

 植物油に豊富な不飽和脂肪酸の有用性は明確だ。

 脂質を作る必須栄養素の脂肪酸は、細胞膜を構成したり、ホルモンのバランスを整えたり、ビタミンの吸収を助けたり、ホルモンやビタミンの前駆体になったりする重要なエネルギー源でもある。使い切れなかった脂肪酸は、中性脂肪として蓄えることができる。

 脂肪酸のうち、骨格となる炭素がすべて飽和結合したのが飽和脂肪酸、二重結合(不飽和結合)したのが不飽和脂肪酸だ。不飽和脂肪酸は、二重結合を1個だけ持つ一価不飽和脂肪酸、2個以上持つ多価不飽和脂肪酸に分かれる。

 さらに多価不飽和脂肪酸は、リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸などのn-6系脂肪酸(オメガ6脂肪酸)と、α-リノレン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などのn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)に分かれる。

 このような生体膜成分、エネルギー源、シグナル分子などの多様な働きを持つ不飽和脂肪酸とマイクロバイオータ(腸内微生物相)との関連性を探究する先進研究がある。

飽和脂肪酸、一価脂肪酸、多価脂肪酸が「3:4:3」に近づくように

 腸は「第2の脳」と言われるように、脳と腸は自律神経系や液性因子(ホルモンやサイトカイン)を通じて緊密に影響を与え合っている。この「脳腸相関」のメカニズムによって、約60%が脂質で構成されている脳も、新陳代謝が早い腸内免疫細胞も不飽和脂肪酸の影響を強く受けている。

 この機序に着目したのが、理化学研究所統合生命医科学研究センターの有田誠氏らの新学術領域研究プロジェクトだ。

 有田氏らは、平成27~31年の5年間にわたり「リポクオリティ(脂質の質)が解き明かす生命現象」をテーマに研究に携わっている。
 
 この研究プロジェクトは、最先端の質量分析技術を駆使しつつ、10万を超えるリポクオリティ(脂質の質)の多様性を識別し、ヒトの生命現象、ホメオスタシス(恒常性)、生理機能の機序を解明する新たな学術領域に進展すると期待されている。

 ちなみに、『第六次改訂日本人の栄養所要量』は、「飽和脂肪酸:一価脂肪酸:多価脂肪酸」を「3:4:3」に近づくようにバランスよく摂取することを推奨している。

 さて、不飽和脂肪酸は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の3原子で構成され、炭素原子の端にカルボキシル基(-COOH)が鎖のようにつながっている。

 DNAも不飽和脂肪酸も、鎖というシンプルな仕組みによってデザインされている事実を知れば知るほど、生命現象の神秘を感じないではいられない。
(文=編集部)

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