「森のバター」と称される、濃厚でクリーミーな味わいを持つアボカド。脂肪分が多く高カロリーな果物というイメージだが、ギネスブックに「世界一栄養価の高い果物」として認定されているほどのヘルシーフルーツだ。
アボカドは、動脈硬化や老化防止に効果があるビタミンE、脂肪を分解するビタミンB2、皮膚の再生、新陳代謝、美肌作りに効果があるビタミンB6などのビタミンB群、鉄や葉酸など、25種類以上の栄養素を豊富に含む。 いいこと尽くめのアボガドに、コレステロール値を改善する効果もあることが最近報告された。
米・ペンシルベニア州立大学のLi Wang氏らは、心血管に好影響をもたす可能性のある食品として「一価不飽和脂肪酸(MUFA)」を豊富に含むアボカドに着目し、病気のない肥満者を対象とした試験を実施。1日1個のアボカドを含む中脂肪食を摂取したグループは、アボカドを含まない中脂肪食や低脂肪食を摂取したグループに比べて、コレステロール値が改善されたことを『J Am Heart Assoc』(2015年)で報告した。
2013年に公表された米国心臓協会(AHA)・米国心臓病学会(ACC)ガイドラインでは、心血管疾患の予防として食事の飽和脂肪酸(SFA)をMUFAや多価不飽和脂肪酸(PUFA)に換え、SFAからのカロリー摂取を5~6%にするように推奨している。
Wang氏らは、MUFAやビタミン類などを豊富に含むアボカドに注目。一般的な食事に含まれるSFAをアボカドのMUFAに置き換えた食事制限試験を行い、心血管代謝危険因子に対する効果を検討した。
対象としたのは、健康な過体重・肥満(BMI 25~35)の男女45例(平均年齢45歳)。まず全例に平均的な米国の食事を2週間摂取させた後、①アボカドを含まない低脂肪食、②アボカドを含まない中脂肪食、③ハス種アボカド1日1個を含む中脂肪食の3グループに分け、それぞれ5週間摂取させた。その後、各グループでほかの2種の食事制限を5週間ずつ行い、脱落した例を除いた全例で3種の食事制限を行った。
結果では、LDLコレステロール(LDL-C)は全てで有意に低下したが、アボカドを含めた食事の低下度は大きく、総コレステロールも同じ結果だった。
アボカドに含まれる脂肪酸以外の栄養素も貢献か?
Wang氏らの報告では、「今回の試験で体重減少の効果は認められなかったが、1日1個のアボカドがLDL-Cなどの心血管代謝危険因子に対して有益な効果をもたらすことが示された」と結論付けている。
一方、「アボカドの有無で効果が異なるのは、アボカドに含まれる脂肪酸以外の栄養素などの関与を示す」と指摘し、「MUFAとその他の成分の相乗効果によるものではないか」ともコメントしている。
今回の報告は、アボカドを多く含んだ食事が、脂質プロファイル(血中の総コレステロール、LDL-C、HDL -C、中性脂肪などの値)を健康的に改善するというものだが、アボカドには糖尿病や脳卒中、冠動脈疾患のリスクを減らす可能性も期待されているという。
脂肪には細胞膜の形成や、脳や神経の機能維持、ホルモンの材料になるなどの役割がある。不足すると血管が弱くなったり、肌の乾燥や髪のパサつきの原因にもなる。「食べる美容液」と称されるほど、良質な脂肪がとれるアボカドは、コストパフォーマンスに優れた健康食品といえる。
(文=編集部)