「膵がん」の早期発見につながる血液検査「マルチプレックスプラズモンアッセイ」を開発(depositphotos.com)
米マサチューセッツ総合病院(ボストン)のCesar Castro氏らの研究グループは、膵がんの早期診断につながる新たな血液検査を開発し、『Science Translational Medicine』に発表した(「HealthDay News」 2017年5月24日)。
発表によると、研究グループは「マルチプレックスプラズモンアッセイ」と呼ぶ分析法を採用し、膵がんの80%を占める「膵管腺がん(PDAC)患者」の細胞から血液中に放出される「細胞外小胞(EV)」という構造体を分析したところ、5つの特異的なタンパク質の特徴を持つEVが、PDACの優れたマーカーになる事実を発見した。
また、PDACまたは非がん性の疾患(膵炎など)で手術を受けた患者43人の血液検体を用いて、このマーカーの精度を検証した結果、感度(陽性になる確率)は86%、特異度(陰性になる確率)は81%だった。
CA19-9よりも精度が高く、費用は1回60ドルとメリットが大きい
米国立がん研究所(NCI)の推計によれば、年間約5万3700人が膵がんの診断を受けている。だが、膵がんは、進行が速く、発見しにくく、転移が早いため、黄疸などの症状が現われる頃は進行している場合が多いので、致死率が高い。
5年生存率は部位別がんの最下位のわずか8%。罹患者の2割がリンパ節切除するが、切除しても約7割が再発するので、予後が極めて悪いのが特徴だ。
現在、膵がんの腫瘍マーカーとして「CA19-9」による検査が普及している。だが、CA19-9は、がんが進行するまで値が上昇せず、膵臓の炎症や胆管の閉塞によって上昇する場合も少なくないため、治療中の経過確認には有用だが、診断法としては精度が低く、最適ではない。
一方、今回発見されたマーカーは、CA19-9よりも精度が高く、検査の一部は自動化されているので、約10分で完了し、費用は1回60ドルとメリットが大きい。
ただし、Castro氏は、この研究は小規模であるため、今後はスクリーニング法としての実用性を明らかにするため、家族歴のあるリスクの高い患者を対象に検証を重ね、最終的にはあらゆる患者に活用できるスクリーニング法を開発したいと意欲的だ。
また、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(ニューヨーク市)のPeter Kingham氏によると、膵がんの診断は、乳がんのマンモグラフィや大腸がんの内視鏡検査のようなスクリーニング法の開発が急がれるものの、今回の検査法の精度を客観的に評価するためには、さらに大規模な研究の蓄積が必要と指摘している。