連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」第3回

なぜ糖質制限で太らなくなるのか? 太るのは「インスリンの追加分泌」が原因

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1型糖尿病と2型糖尿病はどう違うのか?

 糖尿病には、インスリン分泌がなくなってしまう1型糖尿病とインスリンの効き目が弱くなる2型糖尿病があります。

 1922年にインスリンが実用化されるまで、1型糖尿病は発症後半年から1年で亡くなってしまう恐ろしい病でした。インスリンは血糖値を正常に保つために食事に関係なく微量が分泌されていて、これを「基礎分泌」と言います、1型糖尿病の方ではこれがなくなるために、食事に関係なく正常な血糖を保つことができなくなります。

 この1型糖尿病の患者さんは、少なくとも基礎分泌インスリンを注射で補う必要があります。発症してからずっと、何年も何十年もです。インスリン注射を打つ場所は、お腹であったり太腿であったりするのですが、ほぼ同じ場所に繰り返し皮下注射を打ち続けます。すると、その場所には皮下脂肪がどんどん増えてくるのです。

 つまり、注射器で皮下に投与したインスリンが、食事で過剰に摂取した糖質をその場所でせっせと体脂肪に変えて蓄えているのです。その変化を糖尿病専門医は日常的に目撃しているはずです。

 また、重症糖尿病患者さんをインスリン治療すると、治療初期にはほとんどの方で体重が増えます。インスリンは注射した場所だけでなく全身で作用しますから、全身の内臓脂肪も皮下脂肪も増えるからです。

 「炭水化物を過剰に食べるとインスリンが追加分泌される」
→「インスリンは体脂肪を蓄えるホルモンだから太る」

 これは良く知られたメカニズムだったのです。糖質制限で痩せるのはこのメカニズムの逆になっているだけの話です。
 
 「糖質制限して食後高血糖にならない程度の糖質摂取量に抑える」
→「インスリンの追加分泌がなくなるから太らなくなる」

 というわかりやすい話なのです。

 さて、さらに、糖質制限で太らなくなるだけではなくて、痩せるのはなぜか? これは簡単に説明すると次のようなメカニズムによります。

①われわれの体が必要なブドウ糖(糖質)を肝臓で作り出すようになるから 
②糖質ではなくて脂肪をエネルギーとして使うようになるから 

 しかし、このメカニズムについて少しきちんとした説明が必要です。長くなりますので詳しい話を次の記事でお話しします。

連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」バックナンバー

吉田尚弘(よしだ・ひさひろ)

大阪市内のクリニック勤務。1987年 産業医科大学卒業、熊本大学産婦人科に入局、産婦人科専門医取得後、基礎医学研究に転身。京都大学医学研究科助手、岐阜大学医学研究科助教授後、2004年より理化学研究所RCAIチームリーダーとして疾患モデルマウスの開発と解析に取り組む。その成果としての<アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子の解明>は有名。
その傍らで2012年より生活習慣病と糖質制限について興味を持ち、実践記をブログ「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」を公開、ドクターカルピンチョの名前で知られる。2016年4月より内科臨床医。

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吉田尚弘
子どもが発熱してもあわてない! 薬を減らして免疫力を育てよう
インタビュー「飲むべきか、飲まざるべきか、それが薬の大問題」第1回・とりうみ小児科院長・鳥海佳代子医師

過剰医療を招く一因ともいわれる、わが国の医療機関への「出来高払い制」。国民皆保険制度によって恵まれた医療を享受できる一方、<お薬好き>の国民性も生み出す功罪の両面がある。薬は必要なときに、必要な分だけ――限りある医療資源を有効に使う私たちの賢い選択とは? とりうみ小児科の鳥海佳代子院長に訊く。

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吉田尚弘

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年…

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