オシッコで失神?
左右の頸部には頸動脈が走っています。総頸動脈は左右それぞれ喉仏の高さで、内頸動脈と外頸動脈に分岐します。、この分岐部に頸動脈洞という部分があります。ここにはセンサーがあり、刺激が加えられると迷走神経(副交感神経)が興奮して除脈や血圧低下が生じます。
ですから、急に頸部が引っ張られた時や左右の頸部に外力が加わった時に、失神発作をきたすことがあります。ここの反射が強い人は失神発作を起こしやすいのですが、片側の頸動脈を約10秒マッサージすることで、試すことができます。ただし、決して左右同時に行ってはいけません(心停止することがある)。
また、人間は、膀胱に150~300mlの尿が溜まれば尿意を感じるようになります。排尿時には副交感神経が優位になります。
お酒を飲んでいる時にトイレに行こうとしたところ、立ちくらみや失神が生じることもあります。これも、迷走神経の緊張が亢進して除脈や血圧低下が生じるからで、「排尿失神」と呼びますが、ほかに「排便失神」もあるそうです。
失神が事故の原因に
以前にも紹介しましたが、すべての自動車事故原因の約1割が、「運転者の体調変化」によるものです(参考「事故の約1割は運転者の体調変化が原因~クルマにも鉄道と同じ安全システムを」)。
かつて国土交通省のデータを解析したところ、職業運転者における運転中の体調変化の原因として、脳血管疾患、心疾患に次いで、失神が第3位を占めました。
自動車の運転だけでなく、何かの作業中に失神発作をきたせば危険です。自らも意識を失って倒れますから、後頭部を中心に地面に打撲します。重症頭部外傷の原因にもなります。
医療従事者は、転倒して搬送された患者を診る時に「以前にも失神して倒れたことがあるか?」と尋ねます。自立神経の異常がある人は、このような発作を繰り返すことが多く、原因を探るためにまず聞くのです。