連載「死の真実が〈生〉を処方する」第37回

自動車事故の陰に潜む「失神」の正体!? 事故原因の約1割が運転者の体調変化

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オシッコで失神?

 左右の頸部には頸動脈が走っています。総頸動脈は左右それぞれ喉仏の高さで、内頸動脈と外頸動脈に分岐します。、この分岐部に頸動脈洞という部分があります。ここにはセンサーがあり、刺激が加えられると迷走神経(副交感神経)が興奮して除脈や血圧低下が生じます。

 ですから、急に頸部が引っ張られた時や左右の頸部に外力が加わった時に、失神発作をきたすことがあります。ここの反射が強い人は失神発作を起こしやすいのですが、片側の頸動脈を約10秒マッサージすることで、試すことができます。ただし、決して左右同時に行ってはいけません(心停止することがある)。

 また、人間は、膀胱に150~300mlの尿が溜まれば尿意を感じるようになります。排尿時には副交感神経が優位になります。

 お酒を飲んでいる時にトイレに行こうとしたところ、立ちくらみや失神が生じることもあります。これも、迷走神経の緊張が亢進して除脈や血圧低下が生じるからで、「排尿失神」と呼びますが、ほかに「排便失神」もあるそうです。

失神が事故の原因に

 以前にも紹介しましたが、すべての自動車事故原因の約1割が、「運転者の体調変化」によるものです(参考「事故の約1割は運転者の体調変化が原因~クルマにも鉄道と同じ安全システムを」)。

 かつて国土交通省のデータを解析したところ、職業運転者における運転中の体調変化の原因として、脳血管疾患、心疾患に次いで、失神が第3位を占めました。

 自動車の運転だけでなく、何かの作業中に失神発作をきたせば危険です。自らも意識を失って倒れますから、後頭部を中心に地面に打撲します。重症頭部外傷の原因にもなります。

 医療従事者は、転倒して搬送された患者を診る時に「以前にも失神して倒れたことがあるか?」と尋ねます。自立神経の異常がある人は、このような発作を繰り返すことが多く、原因を探るためにまず聞くのです。

連載「死の真実が"生"を処方する」バックナンバー

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。社会医学系指導医・専門医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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