過労自殺問題で揺れる電通の新入社員たちは……
さらに、初回の自傷行為に「暴力的な手段」を用いた層の場合、「自傷行為から1カ月以内の急性期(不安定期)」の自殺リスクが高く、その比率は残る11カ月間の約10倍にも相当したというから、「銃の悪魔的な誘惑」の怖さがわかる。
「急性期」の定義は医学上、曖昧ではあるものの、論文主筆者のOlfson氏は、次のように述べている。
「われわれの研究成果として、自傷行為後の数カ月間は患者の安全を確保できるよう、周囲が尽力すべきであることが示唆された。その時期の自傷患者の自殺リスクを低減するためにも、医師陣は入院や監視強化、彼らの背景にある精神疾患の治療を十分に考慮するべきだと思われる」
翻って、アベノミクス下のわが国では、昨秋、大手広告代理店・電通に勤務していた新入社員の過労自殺が社会問題化。4月3日、2017年度の入社式が行なわれ、渦中の新人広告マンにマイクを向けるテレビ局の姿も散見されたが……。
あにはからんや、むしろ「周囲の人たちのほうが心配している」と新入社員たちは異口同音に語り、「仕事のキツさや上限関係の厳しさ」は織り込み済みで、「早く一人前になりたい」と意欲を述べる声が大多数を占めていた。
一方、暦がめくられ、ゴールデンウイーク期間中の浮かれも終われば、「例年、自殺が急増する」といわれる「5月病」の季節がやってくる。そのタイミングを前に公表された「世界のうつ病患者3億人超」という世界保健機構(WHO)の報告については、次回の記事で紹介しよう。
(文=編集部)