身近な家庭用品が命を奪う毒に(shutterstock.com)
我々の身近にあるものの中に、生命に危険を及ぼす可能性のある物質は、少なくありません。本来の使用目的に従っていれば、その危険性はありませんが、子どもや高齢者が誤って口にすれば……。
日常生活で何げなく使うものが、危険な場合があります。たとえばピーナツ。乳幼児が誤嚥すると気管や気管支に入って肺炎になるばかりか、最悪の場合、命の危険にさらされる可能性もあります。また、ボタン型電池を飲み込んでしまうと、体内で毒性物質が出る危険性があり、緊急に取り出さなければなりません。さらには、食器や衣類の洗剤も、誤って飲むと死亡する危険性があります。
今回はこのような「身近にある危険な毒」についてお話しします。
農薬や殺虫剤、洗剤に含まれる界面活性剤の恐怖
農薬や殺虫剤、洗剤などの中には、界面活性剤が含まれているものがあります。界面活性剤は、水に溶けたときの性質変化で、陽イオン型、陰イオン型、非イオン型の3種に大別されます。
陽イオン型の界面活性剤は、殺菌、消毒、防カビ剤などに用いられます。この物質にはタンパク質を固まらせる作用があるため、もし誤って飲んでしまうと、囗や食道、胃の粘膜を腐食し、潰瘍などを生じさせます。さらに、この物質が血液中に吸収されると、高い確率で死に至ります。
非イオン型や陰イオン型の界面活性剤は、直接の粘膜刺激が少ないので、低濃度で何かに混入されても気づかないことがあります。もちろん、高濃度、あるいは多量に服用すれば、嘔気します。界面活性剤は水に溶けやすいため、胃腸から血液中に吸収され、心臓の働きや呼吸に影響を及ぼし、死に至ることがあります。
界面活性剤を飲んで死亡するケースは、ほとんどが自殺。ある高齢者は、家庭用の液体洗剤を200ml飲んで死亡しました。また、シャンプーを150ml飲んだ人が死亡した事例もあります。コップ1杯の量を飲んだだけでも死亡するのですから恐ろしい。
界面活性剤の吸収は早く、服用したことが分かったら、すぐに救急車で医療機関に搬送することが重要です。意識がはっきりしている場合には、多量の牛乳を飲んで希釈するのも応急措置の一つです。牛乳はタンパク質を多く含むので、陽イオン型の界面活性剤の拮抗薬(別の物質の作用を妨害する物質)としての効果もあります。