GW明けは自殺者が増える!?(shutterstock.com)
毎年、ゴールデンウイークが明けた時期に自殺が急増する。抑うつ、無気力、不安、焦りに襲われる五月病と自殺の相関は高い。
警察庁の集計(2016年1月15日の速報値)によれば、2015年の自殺者は前年比5.7%(1456人)減の2万3971人。6年連続の減少で18年ぶりに2万5000人を割り込んだ。
だが、1日平均約66人もの人が自殺している状況は変わらない。10万人あたりの自殺率(2014年)は20.9人。OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均12.4人よりかなり高い。
自殺者数の内訳は、男性1万6641人(前年比745人減)、女性7330人(同711人減)。都道府県別で増加率が高いのは岡山(19.0%)、石川(17.1%)、熊本(10.3%)。減少率が高いのは高知(36.2%)、徳島(23.1%)、山梨(20.2%)。自殺の原因は、病気、経済的問題、家庭問題、仕事・職場の人間関係の順だ。
自殺する人はSOSサインを出している
なぜ人は自殺するのか? この難問に正解はない。ただ、自殺する人はSOSサインを出している。高橋祥友・著『自殺の危険』(金剛出版)によれば、自殺はある日、突然に、何の前ぶれもなく起きるのではなく、自殺に至る前に自分の安全や健康を守れなくなる現象が起きている。
特に、うつ病の人に見られる自殺の兆候現象を、事故傾性(accident proneness)と呼ぶ。たとえば、ギャンブルにのめり込む、多額の借金をする、暴力事件を引き起こす、自暴自棄に陥って投げやりな行動をとる、車の運転や言動が荒くなる、性的な逸脱行為を重ねる、些細なケガで事故を起こす、忽然と失踪する、職場を無断欠勤するなどは事故傾性の特徴だ。
また、慢性糖尿病の患者がインスリンを投与しなくなる、腎不全の患者が人工透析を受けなくなる、臓器移植を受けた患者が免疫抑制剤の服用を止める、慢性疾患の予防や医学的な助言をまったく無視する、自分の健康管理に無頓着になり、必要な処置を拒む。生命の危険につながりかねない無謀な行為に及ぶのも事故傾性だ。
このような意識的にも無意識的にも自己破壊的な破綻した言動を示すうつ病の人は、事故を避ける配慮や注意力が不足し、現実を冷静に考える能力が低下しているため、事故に頻繁に遭いやすくなり、自殺に走るリスクが高まる。
うつ病、双極性障害、気分変調症は、自殺の3大要因!?
アメリカ精神医学会の定めた精神障害(うつ病、双極性障害、気分変調症)に関する診断基準である「DSM‐1V‐TR」の評価スケールによれば、重症のうつ病患者の6人に1人は自殺するため、うつ病患者の自殺率は健常者より数10倍も高い。自殺未遂歴のある糖尿病患者の10人に1人は自殺に至るが、その自殺率の高さは健常者の数百倍に相当する。
世界保健機関(WHO)が行った調査によれば、自殺と精神障害には密接な関連がある。自殺者が生前に何らかの精神障害に陥っていた割合はおよそ9割だが、連切な治療を受けていた人は2割程度に留まる。WHOは、自殺の強い誘因になる精神障害を早期の段階で診断し、適切な治療を実施すれば、自殺を予防できると強調する。