連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」第21回

がん患者は「温泉」に入ってはいけない? 「根拠なき根拠」が32年ぶり改定された経緯

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がん治療に「温熱療法」が効く可能性は?

 ちなみに、以前、筆者は、乳がんにおける「熱ショックタンパク(HSP)70」の発現を検討したことがある。その結果、悪性度の高い乳がんには、しばしば「HSP70」の発現がないことが判明した。

 HSPは、熱に対する細胞の抵抗性の元となる。つまり「悪性度の高いがんは熱に弱い!」というわけだ。だから、「温熱療法」が有効である可能性が高い。

 たとえ45℃以上の熱い温泉に入っても、体内の温度はそう簡単に37度を超えることはない。だとしても、少なくとも温泉は、「がん細胞が喜ぶ条件」でないことだけは確かだ。効くと信じて温泉に入る。そう前向きに捉えよう!

 言うまでもなく、体表面の病気には温熱療法が有効だ。ハンセン病に対する治療効果は、古く江戸時代から群馬県、草津温泉のうたい文句だった。らい菌は熱に弱い! ミズムシなどの皮膚のカビ感染症にも温熱療法がよく効くことは間違いない。

連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」バックナンバー

堤寛(つつみ・ゆたか)

2017年4月より、はるひ呼吸器病院(愛知県)病理診断科の病理部長。慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍。2001〜2016年、藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書、電子書籍)『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス、電子書籍)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)、『患者さんに顔のみえる病理医からのメッセージ』(三恵社)『患者さんに顔のみえる病理医の独り言.メディカルエッセイ集①〜⑥』(三恵社、電子書籍)など。

堤寛の記事一覧

堤寛
子どもが発熱してもあわてない! 薬を減らして免疫力を育てよう
インタビュー「飲むべきか、飲まざるべきか、それが薬の大問題」第1回・とりうみ小児科院長・鳥海佳代子医師

過剰医療を招く一因ともいわれる、わが国の医療機関への「出来高払い制」。国民皆保険制度によって恵まれた医療を享受できる一方、<お薬好き>の国民性も生み出す功罪の両面がある。薬は必要なときに、必要な分だけ――限りある医療資源を有効に使う私たちの賢い選択とは? とりうみ小児科の鳥海佳代子院長に訊く。

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