吉本興業+松竹芸能~笑いの「がん」に及ぼす影響を探求
一方、前掲4者の発表に先立つ1月25日、大阪府が発表した内容も「笑いの影響」に関する実証研究への取り組みというものだった。
こちらは旧・府立成人病センター(大阪市東成区)の移転に伴い、地方独立行政法人・大阪府病院機構が「大阪国際がんセンター」(同市中央区)と名称変更して3月に開院するのを機に行なわれる試みだ。
笑いが「がん」に及ぼす影響を探求する試みに関しては、吉本興業+松竹芸能という双頭協力体制が組まれている。
しかも、こちらは院内で患者向けに漫才や落語を上演し、実際のがん患者が笑うことでどのような影響・変化を得るのかが実証研究される。
具体性にはセンターの1階ホールで月2回程度の演目を鑑賞してもらい、その前後の血液・唾液検査を行ない、患者にかかるストレスや免疫細胞の変化を分析するという。
笑ってカラダを整える
「笑いの総合商社」とも呼ばれる吉本興業の場合、大学の研究陣とタッグを組んでこの手の影響解析に協力すること自体は初めてではない。
たとえば、2型糖尿病の被験者19名に500kcalの食事を摂ってもらい、初日は単調な医学講義を40分間聴講させ、2日目はお笑い芸を同じく40分間鑑賞させた。
結果、2日間の食後血糖値比で後者が4割近くも上昇を抑えられたそうだ。
がん細胞などを殺す「ナチュラルキラー(NK)細胞」も解析したところ、元来NK細胞の働きの低い人もお笑いを堪能した後では高くなり、逆に高すぎる傾向の人は低くなって、それぞれが適正な状態に落ち着いたそうだ。
そのように「笑い」には、免疫システム全体のバランスを整える効用が示唆されている。今回相前後して発表された2つの「共同研究」がさらなる知見を明かしてくれることだろう。
ところで、お笑いは決して嫌いではないけれども、どうも近年登場の新人の芸風には全然笑えない――。鏡を覗くと仏頂面が目立ってきた……とお嘆きの諸兄にアドバイス。
じつは鏡の前での「作り笑顔」だけでもヒトの気分がほぐれるという意外な効用をご存じだろうか。たとえフェイクな笑顔でも、その表情筋の動きに脳がダマされて、リラックス効果を生むのだとか。さっそくニッとやってみますか?
(文=編集部)