インタビュー「ビジネスパーソンのための睡眠学」第1回 労働安全衛生総合研究所・産業疫学研究グループ部長:高橋正也氏

ビジネスパーソンのための睡眠学〜「4時間でも、ぐっすり眠れば大丈夫」は都市伝説

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労働時間より<帰宅後の夜型化>が問題

――6時間寝てない人が5割以上というのは、労働時間が長過ぎるのが原因でしょうか?

 確かに労働時間の影響はありますが、実は帰宅してからの過ごし方が<夜型化>しているのも大きな理由です。

 一般的な会社員だと、6時か7時頃に起きなければいけません。起床時間は変わらないのに、就寝が遅くなっており、睡眠時間が削られているのです。

 特に若い人に見受けられますが、深夜の2時3時までインターネットやゲームをやって起きている。これでは睡眠時間が短くなって当然です。眠ることの大切さが残念ながら、理解されていません。

――夜更かしをしてネットやゲームに興じると、睡眠の質にも影響を与えそうですね。

 人間の身体は、簡単に「昼=仕事」「夜=休息」と機械のようにスイッチで<オン/オフ>を切り変えられません。起床してから身体と脳が次第に覚醒していき、「仕事(オン)モード」に転じて働き、退勤して、徐々に「プライベート(オフ)モード」になるのです。

 帰宅してから、交感神経から副交換神経が優位になり眠くなる――というのが自然なサイクル。帰宅してから床につくまでの時間を、いかにリラックスできるかが、いい睡眠をもたらすカギとなります。

 では、「夜にゲームをするのが悪い」とも一概にいえません。ゲームをすることで、仕事(オン)仕事からプライベート(オフ)に切り替わり、よく眠れるという人もいます。その人には、ゲームが入眠へのスイッチのような作用を及ぼしているのでしょう。

 同様に音楽を聞いたりDVDを観たりするのも、リラックスする切り替え手段になることもあります。ただし、いずれも2時3時まで興じては、睡眠に悪い影響をもたらすのは間違いありません。

<4時間でもぐっすり眠れば十分>は都市伝説

――短い時間でも、深く眠ることでできたら十分な睡眠になりませんか?

 意図的に「ぐっすり深く眠ろう」としても、自力ではできません。結局、自分で関わることができるのは、「何時に寝て何時に起きるか」という睡眠時間に限られているんです。

 「4時間でもぐっすり眠ればいい」というのは都市伝説のようなもの。それを真に受けるのは危険です。優秀なビジネスパーソンには、睡眠時間をしっかり確保するというセルフマネジメントも不可欠だと思います。

(取材・文=里中高志/精神保健福祉士、フリージャーナリスト)


高橋正也(たかはし・まさや)
独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 産業疫学研究グループ部長。1990年、東京学芸大学教育学部卒業。医学博士(群馬大学)。労働安全衛生総合研究所で仕事のスケジュールと睡眠問題に関する研究に従事する。2000年、米国ハーバード大学医学部留学。共著に『睡眠マネジメント─産業衛生・疾病との係わりから最新改善対策まで』(エヌティーエス)がある。

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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