清潔にしすぎるために、子どものアレルギー耐性が弱くなっている! shutterstock.com
今や共働き家庭の必需品ともいえる食器洗浄機。現在の普及率は約30%と言われている。手洗いではできない70〜80℃の高温洗浄ができるため、除菌効果が高いというメリットもあり、特に育児中の家庭では「衛生的」と重宝されている家電だ。
しかし、便利な食器洗浄機について、海外で気になる研究報告がされた。それによると、機械を使わずに食器を手洗いしていたほうが、子どもが喘息や湿疹などのアレルギーになりにくくなる可能性があるというのである。
清潔な食器でアレルギー耐性が低下
この研究を行ったのは、スウェーデン・クイーンシルヴィア小児病院(イェーテボリ)などの研究グループ。7〜8歳のスウェーデン人の子どもたち1029人を対象に、喘息や湿疹、季節性の鼻炎や結膜炎などのアレルギー調査を行った。さらに「各家庭での食器の洗い方」や「発酵食品を食べる頻度」「農場から直接入手した食品を食べる頻度」を親に尋ねた。
その結果、全体の約12%の家庭が食器を手洗いしていたが、このような家庭の子どもは、食器洗浄機を使用する家庭に比べてアレルギーを発症するリスクが約半分であることが分かった。
詳細に見ると、食器を手洗いする家庭の子どもの23%に湿疹が、1.7%に喘息がみられたのに対し、食洗機を使用する家庭ではそれぞれ38%、7.3%で前者より多い。ちなみに、食器を手洗いする家庭では、鼻炎などの季節性アレルギーの比率も低かったが、そちらは統計的に有意な差ではなかったという。
また、ザワークラウトなどの発酵食品を少なくとも月1回以上食べていたり、地元の農場から入手した食品を食べている子どもは、あらゆるアレルギー疾患になる確率が低い傾向があることも分かった。
「食器を手で洗うことが、食洗機を使うよりも細菌を減らす効果が低いことは、複数の研究が示している。したがって、食器の手洗いが微生物への曝露を増やし、それが免疫系を発達させることによって、子どものアレルギーが低減すると推測する」。今回の研究の筆頭著者のBill Hesselmar氏は、そう述べている。
つまり、食器洗浄機が食器を清潔にしすぎるために、子どものアレルギー耐性が弱くなっているのではないかということだ。これは、幼少期に多くの微生物に触れることで免疫系が発達するとされる「衛生仮説」を裏づける新しい知見である。
適度に雑菌に触れる育児を
衛生仮説については、今までも多くの検証がなされてきた。たとえば、就学前に農村暮らしをしていた子どもは、学齢期のアレルギー性鼻炎罹患率が平均の約3分の1と大幅に低くなる。また、新生児からペットなどの動物と一緒に暮らしている赤ちゃんは、感染症にかかりにくくなるという報告もある。
ただ、子どもにアレルギー性疾患を発症させる環境的・遺伝的な因子は他にもたくさんある。食器洗浄機が必需品となっている家庭で、今さら手洗いに戻すのも現実的ではない。高温多湿な夏などは、調理用具や食器をしっかり除菌することが、有効な感染症の予防にもなっているのだ。
大切なのは、子どもを取り巻く衣食住の環境を見直し「行きすぎた清潔志向」で固めないことだろう。人間は生まれて数年は小さな病気が多いのは当然のことであり、土や水や動物に触れ、いろいろなものを口にすることで免疫系が育つ。多少の汚れは気にしない、そのくらいの生活を志向してもいいのではないだろうか。
(文=編集部)