なぜ日本では筋肉注射での接種が少ないのか?
欧米に限らず日本以外の多くの国では、実はインフルエンザワクチンは筋肉注射で投与されている。日本ではほとんどが皮下注射になっている。
以前より筋肉注射の方が皮下注射より副反応が出づらく予防接種の効果が出やすいという見解も出ている。しかし、ワクチンの効果は抗原に対する抗体価上昇度で評価されるものなのだが、抗体価上昇のメカニズムは明確に分かっているワケではない。このため、個別の判断でインフルエンザの予防接種を筋肉注射で行なう医師もいる。
どうしてこんなことになっているのか? 実はこれには日本独特の理由がある。日本では1970年代までは風邪に対してもすぐに筋肉注射が行なわれるなど日常的な医療手技だった。ところが筋肉注射が原因で「筋拘縮症」が幼児の間で流行し社会問題となったのだ。
1977年の厚生労働省の発表によると筋拘縮症被害患者は9657名だが、自主検診によって確認されただけで、実際には数万人にのぼると推定されている。 こうした経緯から安易な筋肉注射の中止が呼びかけられてきたのだ。
この2~3年では、日本では次々と皮内注射型の接種が導入されてきている。皮下注射より効果が高いと言われていたが、非常に狭い範囲への投与であるために、接種に技術が必要であった。しかし、注射針を短くし、皮下組織の末梢血管及び神経に対するリスクを低減できる皮内投与専用新しいデバイスの開発が進んできたのだ。
今回の研究は効果が高いとされてきたこうした皮内注射と筋肉注射との比較研究だった。
アトピー性皮膚炎によるブドウ球菌のコロニーが皮内投与の効果を減じているのであれば、あたらめてインフルエンザワクチンの接種方法を検討すべきだろう。果たして日本でのワクチン接種の方法の選択はこれでいいのか? 国際標準との乖離はないのか?
(文=編集部)