「加熱式タバコ」や「電子タバコ」の禁煙効果や安全性については賛否両論が(depositphotos.com)
昨年(2016年)9月、厚生労働省が15年ぶりに公表した「タバコ白書」では、肺がん・虚血性心疾患・脳卒中などと受動喫煙との因果関係を「確実」と定義。受動喫煙を原因とする死亡者数も年間約1万5000人と推計していた(同省研究班調べ)。
その際の記者会見で、塩崎恭久厚労相は「(東京五輪を控え)おもてなしの心として、『受動喫煙はありません』という国にかえていかなければならない」と明言している。
そして先日(2月14日)の閣議後の会見で、今国会に提出予定の法改正案(受動喫煙対策強化)に関して、大ブレイク中の「加熱式タバコ」を規制対象とするのかどうかを問われた同相は、こう答えた。
「(加熱式タバコも)受動喫煙の健康影響の可能性があるならば、規制しなくてはならないと考えているが、副流煙の健康影響は(現時点で)十分に明らかではない。すみやかに研究を進め、少なくとも法施行の段階までには判断したい」
そんな厚労相のブレーン陣も判断材料の一つとして参照するかもしれない、新たな知見が『Annals of Internal Medicine』オンライン版(2月7日)に掲載されたので紹介しておきたい。
電子タバコは救世主となるのか?
愛煙家が従来のタバコ類から「電子タバコ」へと完全移行した場合、発がん性物質や有毒な化学物質の摂取量を大幅に低減できる――。
英ロンドン大学(UCL)のLion Shahab氏らは、英国がん研究所の助成を得て今回の研究を実施し、このように結論したのだ。
ちなみに「電子タバコ(VAPEなど)」と「加熱式タバコのiQOS(アイコスなど)」は同様のものと思われがちだが、前者は「ニコチンを含まない」が、後者は「ニコチンを含む」という点に大きな差があることを改めて明記しておこう。
研究は次のような手順で進められた――。
まずは従来のタバコ類から卒業した「完全移行組」と、従来どおりのタバコ類を愛煙している「現役組」の計181人を対象に、「あなたは電子タバコの使用、あるいはニコチン代替療法のいずれかを採り入れてますか?」というアンケートを実施。
次いで、対象者全員から尿と唾液の検体を採取し、ニコチンとタバコ煙に含有される複数の毒素や発がん性物質について詳細に分析を行なった。
その結果、従来のタバコ類から電子タバコに「完全移行」した被験者層の場合、従来と変わらずに普通のタバコ類を愛煙しつづけている被験者層との明確な違いが読み取れた。
具体的にはこうだ――。
まず、タバコ依存を生み出す張本人(物質)である「ニコチンの濃度」自体に両層の違いは認められなかったが、「発がん性や毒性が明確とされている喫煙関連物質の濃度」に関しては、前者の場合は56~97%の減少が認められたのだ。
この減少値は、禁煙や減煙を促すパッチやガムなどのニコチン代替療法を用いている被験者層の数値とほぼ同程度だった。
一方、従来の喫煙習慣を卒業できずに(=完全には禁煙することなく)、気休めに電子タバコやニコチン代替療法を採り入れている被験者層の場合、今回の研究では、ほとんど濃度上の低下は読み取れなかった。