親が横柄なために赤ちゃんが犠牲に?(http://jp.depositphotos.com)
教育現場で教師を悩ませるモンスターペアレント同様、医療の現場において医療スタッフや医療機関に対し理不尽な要求をつき付けたり、暴言・暴力をふるったりする患者やその家族を「モンスターペイシェント」という。
たとえば「待ち時間が長い」と怒鳴り散らし、時には壁を叩く人、「処方された薬で具合が悪くなった」と大騒ぎする人、深夜の救急病院で担当が外科医だと激高し「専門医を呼べ!」と求める人、医師がその必要はないと判断したのに「言われた通りの薬を出せ!」と要求する人、消灯時間を無視し飲酒して騒ぎ続ける入院患者、重症患者を先に診療したことが許せず看護師に怒鳴り散らす人……。
いずれも度を超したクレーマーと言えよう。それが高じると、刑事事件に発展することもある。1月半ばには、歯周病の治療で抜歯されたことに不満を抱いた50代の患者が、クレームを付けた挙げ句、歯科医を刺殺する事件が起こった(岐阜市)。
2013年にも総合病院の診察室で医師が刺殺され、2014年には患者に刃物で斬りつけられた医師が重傷を負った(いずれも北海道)。
ほかにも、救急車をタクシー代わりに使う、特段の理由はなく診療費を支払わない、看護師へのセクハラなど、医療従事者が本来の業務以外に悩まされることが少なくないようだ。
ある調査では、医師の7割近くが「モンスターペイシェント」に対応した経験を持つという(参考:7割の医師が「モンスター患者」に対応!? 理不尽なクレームは誤診を招くだけ!)。
モンスターペイシェントが判断を狂わす?
モンスターペイシェントの多くは、「こちらは金を払っているんだから、治すのが当然」とばかりに医師や看護師に接する。こうした高圧的な態度では、治る病気も治らなくなる可能性がある。
医師や看護師だって人間だ。あってはならないことかもしれないが、非常識な患者や面倒ごとを持ち込む患者の診察はできるだけスルーしたいと思うのではないだろうか。
それでも診察しなければならない時は、「さっさと済ませよう」と思ってしまうかもしれない。それが、診断を狂わせてしまうこともゼロとは言えないだろう。
現に『Pediatrics』(2017年1月号)に掲載された新たな研究では、新生児集中治療室(NICU)で患者の親が医療スタッフに横柄な態度を取ると、「医療の質」が低下する可能性のあることが明らかにされた。
今回の研究では、イスラエルの教育病院で、4つの医療チームに丸1日分に相当する5つの救急医療のシナリオを実演してもらった。そのうち3チームは、1日のはじめに「母親」役から診療内容について強い言葉で非難を受け、残りの1チームは「対照群」とした。
非難を受けた3チームのうち1チームは何も準備せず、1チームは事前に敵対的感情に対する感受性を和らげることを目的としたコンピュータゲームを行い、1チームには非難を受けた後でその出来事について書いてもらうことにより影響を減らすことを試みた。
その結果、「親の態度が医師や看護師の決定を誤らせる原因となる」ことが示された。しかし、事前にコンピュータによるトレーニングを受けると、負の感情に対する潜在的な耐性が向上し、対照群に劣らない仕事ができることもわかった。書くことによる便益は見られなかった。