吉川線を見れば、首吊り自殺か絞殺による他殺かは一目瞭然!
遺体解剖の際、絞死かどうかを判定する目安になるのが「吉川線」だ。人気TVドラマ『科捜研の女9』最終話でも、このようなエピソードがあった――。
首吊り自殺か絞殺かが判然としない死体が上がる。死体の首に残った索条痕は水平でなく、斜めに残っていたことから、主人公の榊マリコは悩む。ところが、死体の首をよく精査するとわずかに掻きむしったような痕が……。
吉川線は、紐やロープなどで首を絞められた場合に、被害者の首に残されるひっかき傷の跡だ。被害者が紐や犯人の腕を解こうと抵抗して、首の皮膚に爪を立てたり、掻きむしったときに生じる。
つまり、吉川線を見れば、自分で首を吊った自殺か、絞殺による他殺かが判明する。この名称は、大正時代に警視庁鑑識課長を務めた吉川澄一(1885~1949年)が「ひっかき傷は他殺の証拠」と学会発表したことにちなむ。
法医学では、紐やロープを頸部に巻きつけて頸部を水平に圧迫し、気道を閉塞させて呼吸できないようにすることを絞頸(こうけい)、絞頸により死亡を絞死、絞頸による他殺を絞殺と呼ぶ。
だが、絞頸による自殺(自絞死)は稀だ。自絞死するためには、結び目を作ったり、機械的な動力を利用して絞め上げたりするなど、意識を失ってもロープが緩まない巧妙な工夫や仕掛けがいるからだ。
ちなみに、手や腕で頸部を圧迫することを扼頸(やくけい)、扼頸による死を扼死(やくし)、扼頸による殺人を扼殺(やくさつ)という。扼殺は、喉にある舌骨、首、胸などを骨折している場合が少なくない。
いずれにせよ、まだ容疑者逮捕の第一報の段階だ。本当に妻を絞殺した後、首吊り自殺かのように偽装したのか――。現時点では、いわゆる「警察の報道発表」だけしか情報ソースはないが、捜査の経緯を見守りつつ、事実の解明が望まれる。
(文=編集部)