首つり自殺か、自殺偽装の絞殺かは、なぜわかるのか?(shutterstock.com)
出版大手・講談社で青年コミック誌「モーニング」の編集次長の社員が、2016年8月9日未明、東京・文京区の自宅で妻の首を圧迫して殺害したとして、本日(1月10日)、殺人の疑いで警視庁に逮捕された。
逮捕されたのは東京・文京区に住む韓国籍の朴鐘顕(パク・チョンヒョン)容疑者(41)。警視庁の調べによると、事件は同日午前2時45分ごろ、自宅階段の下で妻が倒れているとして朴容疑者が119番して発覚。
妻の死因について、捜査員への朴容疑者の説明が「階段から落ちた」「首をつって自殺した」と変遷するなど不審な点があったため、捜査1課が調べていた。
さらに、妻が自宅で倒れているのが見つかった際、朴容疑者が自宅にいて、付近の防犯カメラの映像でほかの人物が部屋に侵入した形跡が無かったこと、また、遺体を司法解剖した結果、妻の首に絞められたような痕などがあることが判明したという。
捜査1課は解剖結果や現場の状況などから、朴容疑者が妻の首を絞めて殺害した可能性が高いと判断し、逮捕に踏み切ったようだ。夫婦の間に何らかのトラブルがあったと見て詳しい経緯を調べることにしている。
首つり自殺か、自殺偽装の絞殺かは、なぜわかるのか?
なぜ殺人偽装の容疑が浮上したのか――。
上記のように容疑者の証言が二転三転するなど不審な点があったことも大きいが、その決め手は司法解剖によって、「遺体に絞殺の跡」が見つかったことだろう。
しかし、「首つり自殺か?」「自殺偽装の絞殺か?」は、なぜわかるのか?
それは首つり自殺(縊死)と絞め殺された他殺死(絞死)では、死体の特徴がまったく異なるからだ。首つり自殺(縊死)の場合は、首に自分の体重が一気にかかるため、椎骨動脈が圧迫されて頭部への血流が止まるので、顔面が蒼白になる。
足が完全に地面から離れるオーソドックな定型縊死では、死後時間の経過とともに糞尿が出る、首が伸びる。だが、ドアノブなどを使って足を地面に付けたまま首を吊る不定型縊死では、死体の眼球に溢血点や顔面にうっ血が出る。
溢血点とは、毛細血管の内圧の上昇、低酸素や無酸素状態による毛細血管壁の透過性の亢進、毛細血管壁の痙攣などよって生じる小さな出血痕だ。うっ血とは、静脈や毛細血管内の血流が停滞・増加した状態。局部は冷たく暗紫色になり,静脈や毛細血管は腫れ上がる。
一方、絞め殺された他殺死(絞死)の場合は、窒息死のため、死体の眼球に溢血点が出る。ただし、窒息状態でも椎骨動脈が圧迫されなければ、血流があるので、顔面は赤黒くうっ血する。