ヘリコバクター・ピロリ菌と胃がんの関係性は疫学的にほぼ証明されている(shutterstock.com)
お正月気分もそこそこに仕事始め。2017年が起動した。おせち料理、お餅の食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎ、帰省疲れ、正月ボケなどで体調が思わしくない人も少なくないかもしれない。
胃腸はタフな臓器だが、ホルモン分泌のバランスが崩れたり、慢性的なトラブルを抱えると、なかなか復調しないナーバスな頑固者でもある。「胃がん」などを誘発するリスクもあるので、決して侮れない。
「胃がん」に罹る日本人は「肺がん」についで多く、およそ13万人。 原因は多岐に及ぶ。胃粘膜が腸上皮化生という粘膜に置き替わり、がん化しやすい慢性胃炎、慢性的な炎症、ヘリコバクター・ピロリ菌による炎症のほか、塩分過剰、食物繊維不足、飲酒過剰、喫煙、ストレス、がん遺伝子の活性化とがん抑制遺伝子の不活性化などの諸要因が複合化して発症に至る。
その中でも胃がんの主な原因である「ヘリコバクター・ピロリ菌」の新たな研究成果が発表されているので紹介しよう。
胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌を除去しても再発のリスクが
昨年(2016)年12月、国立がん研究センターの牛島俊和分野長らの研究グループは、胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌を除去後も、遺伝子異常によって再発リスクが高まると発表した。
研究グループは、胃がんの治療が終わった患者800人を対象にメチル化と呼ばれる遺伝子異常がどのように発生しているのかを調べるため、患者を4グループに分け、5年間にわたって術後の経過を観察・分析。その結果、異常が最も少なかったグループの患者のがん再発率は7%だったが、異常が最も多かったグループの患者のがん再発率は19%と高かった。
牛島分野長によると、除菌後に発症リスクの高い人が分かり、検診を徹底すれば、早期発見できるだけでなく、メチル化の異常は肝臓がんや大腸がんにも関わると見られるので、研究をさらに進めたいと話している。
このように、ヘリコバクター・ピロリ菌と胃がんの関係性は、疫学的にほぼ証明され、1994年に世界保健機関(WHO)は、ヘリコバクター・ピロリ菌を有害な発がん物質に指定している。
では、このヘリコバクター・ピロリ菌はどんな細菌か?