健康のために走ったり、歩いたり、ランニングやウォーキングに勤しむ人は多い。その足元はスニーカー、ウォーキングシューズ……。クッション性のある靴の中敷きは、ケガの予防に有効だと考える人は多い。だが、それを否定する結果が新たな論評で示された。
オーストラリアのラ・トローブ大学(メルボルン)のDaniel Bonanno氏によると、衝撃吸収性の中敷きには負傷を防止する効果はほとんどなく、個人の足に合わせて作られた足底板(foot orthotics)にのみ、疲労骨折や脛の痛みなどの一部の傷害に対する予防効果が認められたという。
今回の報告は『British Journal of Sports Medicine』(2016年12月12日オンライン版)に掲載された。
ただし、今回のレビューで評価した研究には問題点もあり、クッション性のある中敷きに価値がないかどうかは未だ議論の余地があると、Bonanno氏は指摘している。
「レビューの対象とした研究の大部分が、適切にデザインされた試験ではなかった。負傷リスクを低減するために、足底板もしくは衝撃吸収性の中敷きを用いるべきかについて、消費者や医師に十分な情報を提示するには、もっと質の高い研究が必要である」(同氏)
衝撃を吸収する中敷きは負傷リスクの可能性も?
米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のRobert Glatter氏によると、クッション性中敷きは靴店やドラッグストアで購入でき、価格は10ドルから100ドル以上のものまである。
足底板は、専門店または足専門医からしか入手できず、200~400ドルの費用がかかるが、すでに症状がある場合は保険が適用されることもあるという。
Glatter氏は、「中敷きは衝撃を低減できるが、顕著なアーチがなく十分な支えが得られない。十分な支えに衝撃吸収性を組み合わせるのが最終的な解決策となると考えられる」とコメント。
そして、「さほど激しくない運動やスポーツをする人は足底板にお金をかける必要はないが、足や背中に障害のある人には有益だ」と助言している。
今回の研究では、足底板に関する試験11件、衝撃吸収性中敷きに関する試験7件を分析。足底板には、負傷全般、脛の痛み、疲労骨折を予防する効果が認められたが、中敷きには認められなかった。
具体的には、足底板によって負傷全般のリスクが28%低減し、疲労骨折が41%低減したが、腱や筋肉の傷害、膝や背中の痛みには低減が認められなかった。
衝撃吸収性中敷きでは、いずれのタイプの負傷リスクも減少せず、1件の試験では負傷リスクが増大する可能性が示唆された。