セルフメディケーション税制の課題は何か?
セルフメディケーション税制に節税メリットがあるのは分かった。だが、課題はないのだろうか?
厚労省(平成27年度 国民医療費の概況)によれば、医療費は約41.5兆円と高止まりし、13年連続で過去最高を更新中。国民1人当たりの医療費は32万1,100円に上る。
厚労省は、セルフメディケーション税制の導入によって医療費の抑制を図りつつ、国民の健康意識の強化、自己管理の促進、健康の増進、病気の予防を包括的に実現することを目ざしているという。国策としてのセルフメディケーションを浸透させる大義名分はよく理解できる。
しかし、セルフメディケーションが進まない根本的な原因はないのか?それは、OTC医薬品の価格にあるように見える。
総務省(1992年〜2014年の保険医療に関する約9千世帯の家計調査)によれば、医薬品全体の購入額は、2万8087円(1992年)から2万7957円(2014年)に僅かに減少している。一方、OTC医薬品の年間購入額は、1万3636円(1992年)から1万855円(2014年)に2,781円減少している。
つまり、OTC医薬品の消費者ニーズが低迷している一面を示している。
セルフメディケーション税制の導入は、日本OTC医薬品協会(OTC薬協)などが推進したことから、2016年度税制改正大綱に盛り込まれた。OTC医薬品メーカも識別マークを表示し、啓蒙に努めている。
ただ、対象になるOTC医薬品が限られており、消費者の認知度も約25%と低く、識別マークを見たことがある人は約5%に過ぎない(2016年11月のアンテリオによる調査)。
また、医療費の過剰な抑制は、受診患者数の減少につながるため、医療機関からの批判や不満も聞こえる。調整は簡単ではない。
OTC医薬品の消費を加速させたい厚労省とOTC医薬品メーカの思惑がちらつくのは致し方ない。ただし、期間限定5年、小幅な控除額で国の目算通りの成果が上がるのだろうか? その実効性は疑わしく思える。
厚労省とOTC医薬品メーカの足並みが試されているのだ。消費者の認知と利用の向上に向けたさらなる奮起に期待したい。
ちなみに、新年早々の1月からスタートする新制度が2つある(日経ウーマンオンライン12月22日)。
1つは、経費の精算に必要な領収書がスマホ写真でOKになる。
領収書類の原本の7年間保存が義務づけられていたが、電子帳簿保存法が改正され、画像の改ざんがなければ、スマホで撮影した領収書画像で経費の精算ができる。たとえば、営業などで外出中に経費を立て替えた場合、領収書をスマホで撮影して送信すれば、その場で経費の精算が完了するので、効率化しそうだ。1月1日からスタートする。
もう1つは、クレジットカードで所得税が払えるようになる。
自治体に払う地方税は、住民税、固定資産税・都市計画税、自動車税などのクレジットカード払いができたが、国税はできなかった。対象となる国税は20種類以上ある。たとえば、医療費控除や住宅ローン控除を受ける所得税の確定申告後に納税する場合に、クレジットカードで支払えるようになる。1月4日からスタートする。
さあ、2017年が幕開けた。セルフメディテーションも大切だが、今胸に芽生えている清々しい初心を忘れないようにしたい。健やかないい1年でありますように!
(文=編集部)