『名医は虫歯を削らない』の著者・小峰一雄院長
「虫歯は安易に削らないほうがいい」
これって正解? 不正解?
ネット書店の歯の医学書ランキングで第1位、一時品切れ状態も呼んだ話題の書、『名医は虫歯を削らない――虫歯も歯周病も「自然治癒力」で治す方法』(竹書房)。その書名どおり、著者の小峰一雄院長(歯学博士・小峰歯科医院理事長)は「虫歯を削らない」主義者だ。
「実は海外では、20歳以下の子供の歯は削ってはならないというのが常識になっています。なぜならば、成長期の子供の永久歯を削ってしまえば、30歳までに抜歯することとなる確率がかなり高い事実が統計的にも明らかになっているからです」
小峰一雄・著『名医は虫歯を削らない――虫歯も歯周病も「自然治癒力」で治す方法』(竹書房)
「歯の神経を抜いたその日から、抜歯へのカウントダウンが始まる」と小峰院長は言い切る。なのに「削らないと儲からない(わが国の)保険診療の弊害」がある。さらには歯科医院のうがい水は「細菌だらけ」で、削ったままのフタなし状態でうがいさせることは「傷のある体でどぶ川を泳がせるような無謀なこと」とも語る。
「そればかりか、口中の無数の細菌が抜歯時にできた傷口から血液中に流れ込み、全身を回って菌血症になる場合がある。菌血症自体は軽い症状で落ち着いても、ときに髄膜炎や心筋梗塞、脳梗塞など、命に関わる病気を引き起こす例もあり、私の周囲でもそれらの発症前に歯を抜いたという人は少なくありません。3日以内の抜歯など、出血を伴う歯科治療を受けた人が献血できない理由もそこにあります」
銅セメントが口中から人類を救う?
では、「削らない」「自然治癒力」だけでどう治すというのか? そんな魔法ともいえる治療方法が、小峰院長が実践するのが「ドックベスト療法」だ。
施術前
米国で開発されたドックベスト療法は、殺菌作用のある銅2%と鉄1%、さらに複数のミネラルが含まれた「ドックベストセメント」を用いる。そのセメントを虫歯の穴に詰めると虫歯菌を死滅させ、歯の再石灰化を促してくれる、いわば「栄養素の塊」というわけだ。しかも、治療時間はわずか10分程度というから驚く!
施術後
「これで虫歯の痛みや進行は止まりますが、虫歯が霧散したわけではない。治療は10分ですが、菌のない密閉された状態で1~2年間、じっくりと時間をかけて再石灰化するのを待ちます。この間、とくに痛みが出るなどの異常がなければもう、虫歯は治ったと考えていいでしょう」
実はこのドックベストセメントの前身であり、「カッパーセメント(銅セメント)」と呼ばれた薬自体は19世紀後半時点で既に登場していた。現役の御年輩の金属冠を外し、中に赤いセメントが詰めてあれば、それが件のセメントだという。その世代の虫歯ができない治療痕に注目し、カッパー(銅)の抗菌メカニズムを研究して治療や予防に役立てようと考えたのが、歯科医のDoc Holliday氏だったという話。