覚せい剤依存は病気! <刑罰でやめさせる>ではうまくいかない
これだけ社会的な制裁を受けながら、それでも覚せい剤使用をやめることができないのは、どうしてなのだろうか――。
薬物依存研究の第一人者である国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長である松本俊彦医師は、当サイトのインタビューにこう答えている。
「覚せい剤依存というのは<病気>です。病気である以上、刑罰や叱責による歯止めには限界がある。だから、医療者は患者として相対し、できることをやっていくことが大切なんです」
松本医師によると、覚せい剤依存は一種の<慢性疾患>であり、これを刑罰によってやめさせようとしてもうまくいかないことが多い。それよりも、いかに医療モデルの中に組み込んでいくかが大切なのだという。
大切なのは薬物について率直に相談できる援助者
効果的なプログラムとしては、たとえば松本医師が開発した「SMARPP(スマープ)」がある(参照:薬物依存で<人里離れた施設に隔離>は古い?~街中でも治療可能な「SMARPP=スマープ」)。
これは、マニュアルとワークブックに基づく24セッションで1クールのプログラムだ。薬物についての知識を学んだり、認知行動療法的なスキルで再乱用を防いだりできるという。
一方で、松本医師はこのようなことも述べている。
「とにかく薬物について率直に話せる援助者との関係が長く続くほど、再発率が低いことがわかっています」
人気アーティストだったゆえに、マスコミに常にマークされて普通の人としてふるまうことのできないASKA被告には、身の回りに薬物について率直に相談できる援助者があまりいなかったのだろうか。
彼のためには、マスコミや一般人も奇異な目で監視するのではなく、共に支え合う人との関係が作りやすいように、そっと見守ることも必要だったのかもしれない。
(文=編集部)