家族が覚せい剤を使っていたら精神保健福祉センターに(shutterstock.com)
ASKAや清原和博、高知東生、先日も女優の高樹沙耶が大麻所持の疑いで逮捕され、薬物問題の裾野の広さがあらためて明らかになった。私たちは薬物という問題にどう向きあえばいいのか。
「薬物依存は慢性疾患」であると提唱する国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部部長で薬物問題の第一人者である松本俊彦医師に訊いた。その第2回を送る。
「これでやっと薬をやめられる」への批判は無知なコメント
――ASKA、清原和博、高知東生など、芸能人やスポーツ選手の覚せい剤による逮捕が相次いでいます。松本先生は、これらのマスコミの報じ方にも違和感を覚えているそうですね。
高知東生さんが逮捕された時に、集まった報道陣に「ありがとうございます」と言ったことに対して、あるタレントがテレビ番組で「ふざけるな」と批判していました。
「反省が足りない」と言うのが、その方の理由です。逮捕されたその瞬間だけは、「これでやっと薬をやめられる」と思い、お礼の言葉が口からついて出てしまうというのは、薬物依存症患者には普通にあることなんです。
この言葉は、それだけその人が悩んでいた、苦しんでいたことを示すものであることが多いのです。それなのに、どうして、薬物に対してあまり知識のない人が、そのようなコメントをするのか、残念に思いました。
私は、<薬物依存は慢性疾患>だと考えています。だから、芸能人がクスリでつかまると、マスコミが「栄光と堕落」とか「調子に乗っていたからこういうことになった」など、その人の生きざまや人格をすべて否定するような報じ方にも、違和感を覚えます。
先日、糖尿病で透析をしている方を非難して炎上したジャーナリストがいました。普通は、糖尿病患者に対して「自業自得だ」などとは言いませんよね。同じ食生活をしていても、体質によって糖尿病になる人とならない人がいるのですから。
薬物依存も同じように、本人の意志だけではどうしようもない慢性疾患だと考えれば、人格と結びつけて攻撃するのは適切でないということが分かるはずです。
また、事件が起こると、テレビ番組などで、必ず覚せい剤の粉や注射器のイメージ映像を持ち出すのも問題です。そういったものが薬物依存症患者の目に入ると、薬物への欲求がぶり返し、再び手を出してしまいます。
マスコミは、自らの報道によって、薬物依存から立ち直ろうとしている人を再犯に導く可能性もあるということを自覚していただきたい。