インタビュー「薬物依存は慢性疾患である」第2回:松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部部長)

家族が覚せい剤を使っていたら……高知東生の「これで薬をやめられる」は本心

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
303163454.jpg

家族が覚せい剤を使っていたら精神保健福祉センターに(shutterstock.com)

 ASKAや清原和博、高知東生、先日も女優の高樹沙耶が大麻所持の疑いで逮捕され、薬物問題の裾野の広さがあらためて明らかになった。私たちは薬物という問題にどう向きあえばいいのか。

 「薬物依存は慢性疾患」であると提唱する国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部部長で薬物問題の第一人者である松本俊彦医師に訊いた。その第2回を送る。

「これでやっと薬をやめられる」への批判は無知なコメント

――ASKA、清原和博、高知東生など、芸能人やスポーツ選手の覚せい剤による逮捕が相次いでいます。松本先生は、これらのマスコミの報じ方にも違和感を覚えているそうですね。

 高知東生さんが逮捕された時に、集まった報道陣に「ありがとうございます」と言ったことに対して、あるタレントがテレビ番組で「ふざけるな」と批判していました。

 「反省が足りない」と言うのが、その方の理由です。逮捕されたその瞬間だけは、「これでやっと薬をやめられる」と思い、お礼の言葉が口からついて出てしまうというのは、薬物依存症患者には普通にあることなんです。

 この言葉は、それだけその人が悩んでいた、苦しんでいたことを示すものであることが多いのです。それなのに、どうして、薬物に対してあまり知識のない人が、そのようなコメントをするのか、残念に思いました。

 私は、<薬物依存は慢性疾患>だと考えています。だから、芸能人がクスリでつかまると、マスコミが「栄光と堕落」とか「調子に乗っていたからこういうことになった」など、その人の生きざまや人格をすべて否定するような報じ方にも、違和感を覚えます。

 先日、糖尿病で透析をしている方を非難して炎上したジャーナリストがいました。普通は、糖尿病患者に対して「自業自得だ」などとは言いませんよね。同じ食生活をしていても、体質によって糖尿病になる人とならない人がいるのですから。

 薬物依存も同じように、本人の意志だけではどうしようもない慢性疾患だと考えれば、人格と結びつけて攻撃するのは適切でないということが分かるはずです。

 また、事件が起こると、テレビ番組などで、必ず覚せい剤の粉や注射器のイメージ映像を持ち出すのも問題です。そういったものが薬物依存症患者の目に入ると、薬物への欲求がぶり返し、再び手を出してしまいます。

 マスコミは、自らの報道によって、薬物依存から立ち直ろうとしている人を再犯に導く可能性もあるということを自覚していただきたい。

「がん免疫療法」の情報が氾濫~正しい知識を得るのが<がん克服>のカギ
インタビュー 進行がんは「免疫」で治す 第1回 昭和大学教授 角田卓也

<第4の治療>として注目されている「がん免疫療法」。がん免疫療法の最前線で研究を続けてきたエキスパートである昭和大学の角田卓也教授に、その種類と効果、実績などを元に、一般の人が「正しく治療法を選ぶための知識」について訊いた。

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curti…

三木貴弘

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年…

里中高志

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立…

一杉正仁