柳原病院の「強制わいせつ」事件の真相は? 麻酔の副作用による患者の「性的幻覚」の可能性も

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どこに信憑性の根拠をおくか?

 その上で警察に対しては、捜査の速やかな終了を求めてきたが、前掲の声明文によれば「7月7日以降千住署からは一切の問合せもないまま、8月25日突然の逮捕となった」とか。任意同行さえも経ないその経緯を読めば、web上で「自白強要にでも持ち込むつもりか!」的な警察批判=外科医擁護の声々が飛び交うのもさもありなん。

 柳原病院は女性患者の供述に関しても、医療従事者の立場から「全身麻酔による手術後35分以内のことであり、その内容は、手術前の恐怖や不安と全身麻酔で行った手術後せん妄状態での幻覚や錯覚がおり混ざったものと確信する」と明確に断言している。

 また、この声明に呼応するかたちで有志翻訳による海外文献の日本語訳もネット上で公開され、麻酔の副作用として「性的な幻覚が報告されている」事例が紹介されている。性的な幻覚によって訴訟にまで発展した複数の例にも言及され、それと同時に「性的訴えのリスクを生じかねないため、臨床医は注意を払うべき」とも説明がなされている。

 過去記事〈女性に救命処置で「痴漢よばわり」!?~女性が救命処置を受けにくい本当の理由〉を併読してもらえば分かるとおり、異性が女性の「患部」に触れる際には勇気や英断と同時に「嫌疑」を背負う瞬時の踏み出しが問われるものだ。

 しかし、それが正常な医療行為の範疇である場合、疑いの観点を持ち込まれては、治せるものも治せないだろう。今回の唐突な逮捕劇も最大の疑問部分は、麻酔覚醒直後である女性証言の信憑性をどんな根拠で警察が判断したかという一点にある。

 一部報道にあるように、もし患者の体から医師の唾液が発見されたとしても、それがわいせつ行為によって付着したものではなく、通常の医療行為、つまり医師が問診の際に口から飛んだたものであるという可能性は否定できない。

 一方、仮に医師が麻酔の副作用として性的な幻覚が生じること認識しており、そのことを逆手に取った悪質な犯罪の可能性は無いのか?

 先の声明文の説明によれば、右乳腺腫瘍摘出手術を受けた女性患者はそもそも、外科医が勤務する別クリニックの外来患者という関係で、今回の手術に際して柳沢病院に入院したという。しかも「事件」の翌日と翌々週にあたる27日の術後診察を受診し、半年後の経過観察の診療予約も入れているなどの流れはどう解釈すべきなのか……。

 もし、本件が「不当逮捕」や「冤罪」であった場合、病院側が危惧する如く、今後は「施術医師が術後診察に病室を訪れることもためらう要因」ともなり、正当な医療行為に「制約を付すこと」になりかねないだろう。

 近未来の患部手術、麻酔を要する案件は「同性医師の指名」や「選択可能な医療機関のニーズ対応」が当たり前となるのだろうか。本件に関して、日本麻酔科学会は静観を決め込んでいるようだが、それが「医師による医療行為への委縮」を象徴していなければいいのだが――。

 今後、警察側の捜査はどのような展開を見せるのか、医者と患者の信頼性を問う意味からも、解決手腕が注目される。
(文=編集部)

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