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病院ランキング本が花盛りだ。ざっと見ただけでも、『手術数でわかる いい病院』(朝日新聞出版)、『病院の実力』(読売新聞東京本社)、『病院最前線』(毎日新聞社)、『日経実力病院調査』(日本経済新聞出版社)が毎年発行されている。
売れ行きも好調のようだが、真剣に病院探しをする患者にとって本当に役に立つのだろうか? いずれも新聞社か新聞社系列の出版社が調査・刊行し、信憑性がありそうだが......。
病院ランキング本を徹底比較!
病院ランキング本には取材記事や解説記事も多く、各誌とも読み応えがある。しかし、ここでは記事には触れず、ランキングのみを比べてみたい。
週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2014』はタイトル通り、疾患ごとに手術数の多い順に病院が並べられている。つまり「手術数が多い病院」=「いい病院」というわけだ。確かにこれは一つの目安になる。手術数が多いのは経験が豊富なことであるからだ。
だが、ベッド数が多ければ医師の数も多い、医師数が多ければ手術数も多い、と推測できる。手術執刀医の数を考慮しなければ、医師1人当たりの手術数は算出できないので、現実には大きい病院に有利なランキングとなっている可能性がある。
読売新聞医療情報部『病院の実力2014総合編』では、やはり手術数の多い順に病院名が並ぶが、都道府県別の掲載だ。楽に通える範囲で病院を選択したい人には便利だが、人によっては不便だ。逆に全国ランキングだと遠方の病院も入ってしまうので、そちらのほうが不便と感じる人もいるだろう。通院できる病院を選択肢とする人が、実際には多いからだ。
毎日新聞ムック『病院最前線2015』のランキングは、厚生労働省がウエブサイトで発表しているデータから抜き出したものだ。前出2誌と少し異なり、「手術数」と「処置数」を合計した数の多い順に並ぶが、これがわかりにくい。「処置」とは何かの説明はあるものの、それと手術数とを足すことにどんな意味があるのか、説明が欲しいところだ。手術数と処置数との内訳も不明だ。
日経ムック『日経実力病院調査2014年版』は、医療の質や安全管理、患者サービスなど、病院の診療体制を100点満点で評価している。これは公益財団法人日本医療機能評価機構のデータから換算したもので、100を満点とするため良し悪しが直感的にわかりやすい。
だが、元々の評価項目数が多いので、どうしてもオールマイティ型の病院が有利になる。また、ところどころ数字が空欄の病院があるので何かと思ったら、「評価は病院の依頼を受けて実施する」とある。つまり依頼をしない病院は、評価自体を実施しないため、点数が空欄となっているのだ。
もうひとつの評価であるDPC機能評価係数Ⅱは、厚生労働省が5つの項目について公表した係数を、それぞれA~Dに格付けして評価したものだ。A(4点)、B(3点)、C(2点)、D(1点)で、合計した満点は20点。合計点は参考程度にとどめ、患者自身にとって必要な項目だけを見ていくのもいい。
また、上記二つとは別に、疾患ごとに手術数トップ200~400病院もリストアップしているが、8疾患だけなのが残念だ。しかも、前立腺がん、急性白血病など、患者数や死亡数の多い病気ともいえない。どういう基準でこの8疾患なのか理解に苦しむ。