育児休暇を取っている日本の夫はわずか2.3%
2015年の『世界経済フォーラム』が発表した世界各国の男女の経済的格差に関する調査によれば、日本は145か国中101位。先進諸国に比べると、日本女性のCEOなどへの役員就任率は低く、ビジネスチャンスの門は極端に狭い。
2014年の厚労省などのデータによれば、育児休暇を取っている日本の夫はわずか2.3%。たとえば、スウェーデンの夫は、およそ90%が育休を取っている。イクメンしたいが、できない夫たちの苦悩が滲む。
避妊具メーカーのDurex社が2005年に公表したデータによると、日本人の1年間の平均セックス回数は45回。世界平均の103回に大きく水をあけられている。オルガスムもエクスタシーも萎えている! それが日本の夫婦の実像なのだろうか?
アメリカの心理学者レナード・サックスの研究によると、男女の網膜細胞のメカニズムの違いから、男女は別々のものを見ていると主張する。ものの見え方、着眼点が違うのだ。
さらに、ホルモン代謝の性差も大きい。たとえば、テストステロン値が高まると、男性は攻撃性を強め、闘争心が刺激される。オキシトシン値が高まると、女性は母性愛に目覚め、子育てへの欲求が強まる。女性のセロトニン値は、男性の52%に過ぎないので、セロトニンが不足すれば不安感が一気に強まる。つまり、大脳の遺伝的・生理的な働きの差異によって、夫婦が感じる幸福の優先順位はまったく異なるのだ。
しかし、進化生物学の知見によれば、ヒトはコスト(費用)とベネフィット(便益)を考えながら、常に種族の保存・維持に有利な性戦略を選択し、進化を遂げてきた。したがって、一夫一婦制は、巧みな性戦略の成果なのだ。
進化生物学者のリチャード・ドーキンスは著書『利己的な遺伝子』の中で「ヒトを含むすべての生物は、後世により多くの遺伝情報を引き継ぐように進化の過程で最適化された遺伝子の乗り物(ヴィークル)だ」と説明する。
進化生物学者のロバート・トリヴァースも著書『生物の社会進化』で「すべての生物は遺伝子の複製を最大化するために複雑なゲームを行っている。つまり、生物学は、遺伝子を貨幣、環境を市場とすれば、市場で遺伝子という貨幣を最大化する経済学といえる」と指摘する。
遺伝子という乗り物に乗り、遺伝子の複製を最大化しなければならない。それが一夫一婦制という社会システムの宿命だ。
今回は「なぜ夫婦の愛は冷めやすいのか?」をあれこれと検証してきた。この大命題に「ご名答!」はない。一夫一婦制という認知的不協和(制度と生活実感)のジレンマは余りにも深いからだ。
別れるか? 別れないか? 夫婦は、役割と性差を認め合い、家族という共有環境を育みながら、模索し続けるほかない。結婚は、人生に試練と苦悩を与える。しかし、子どもの成長と未来も授ける。そこに夫婦の希望が灯っている。
最後に再び結婚についての箴言を紹介しよう。
イギリスに「結婚は悲しみを半分に、喜びを2倍に、そして生活費を4倍にする」という諺がある。小説家のオノレ・ド・バルザック(1799〜1850)は「女はよき夫を作る天才でなければならない」と言い、哲学者のフランシス・ベーコン(1561〜1626)は「妻は夫が若いときは愛人に、夫が中年になったら友人に、夫が年をとったら看護婦になれ」と言っている。
(文=編集部)