シリーズ「AIと医療イノベーション」第1回

医師の診療をフォローする人工知能による医療診断システム「ホワイト・ジャック」!

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医師の診療をフォーロー・アップする人工知能医療診断システムが登場(shutterstock.com)

 HAL9000というAI(人工知能)が宇宙船を自在に支配しクルーを殺害する映画『2001年宇宙の旅』は、AIの恐怖を初めて知らしめたSFの傑作だった。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画『ターミネーター』は、AIに翻弄される人類の近未来の悲劇を描く。宇宙物理学者のホーキング博士はAIが人間を超える「2045年問題」に警告を発し、PayPal社の前身X.com社を立ち上げた起業家イーロン・マスクCEOはアメリカの研究機関にAIの安全性を究明する研究資金1000万ドル(約120億円)を寄付した。

 SFでもビジネス・シーンでも、AIを巡る動きは実にセンセーショナルかつインパクトが強い。医療、予防、介護、創薬、ロボットから、セキュリティ、生活、住宅、教育、ショッピング、ファッション、スポーツまで、社会のあらゆるシーンに可能性を広げつつあるAIイノベーション。シリーズ「AIと医療イノベーション」の第1回は、人工知能医療診断システム「ホワイト・ジャック」を取り上げよう。

「ホワイト・ジャック」という名のAIが現われた!

 「医療と生命」をモチーフに手塚治虫が手がけた医療漫画といえば『ブラック・ジャック』だ。『週刊少年チャンピオン』に長期連載された全242話。時間を忘れて、耽溺した人も多いだろうか。無免許だが神業ともいえる卓抜したテクニックで、世界中に名を馳せる天才外科医ブラック・ジャックが主役だ。

 手塚はエッセイの中で「ブラック・ジャックは医療技術の紹介のために描いたのではなく、医師は患者に延命治療を行なうことが使命なのか、患者を延命させることでその患者を幸福にできるのかという医師のジレンマを描いた」と本心を明かしている。

 さて、ブラック・ジャックはフィクションだが、ついに「ホワイト・ジャック」という名のAIが現われた!

 朝日新聞(2016年3月29日)によれば、自治医科大学の石川鎮清教授(総合診療)の研究チームは、創薬支援に取り組むLSIメディエンスや医療機器メーカーの東芝メディカルシステムズなど5社と連携し、AI「ホワイト・ジャック」が医師の診療をフォーロー・アップする人工知能医療診断システムを開発したと発表した。

 発表によると、人工知能が疾患の治療法を探索する試みは過去にあるものの、患者の症状や検査結果などから複数の疾患を提示する仕組みは世界初だ。システムは、入力用ロボット、患者の電子カルテのデータ・診療履歴・治療法・検査法・処方薬など8000万件を蓄積した医療データバンク、想定される疾患を検索・分析・提示するAI「ホワイト・ジャック」、以上の3つの要素技術で構築されている。

 まず、患者は診察時にIDカードをロボットにかざす。ロボットの指示で予診票に症状や発症時期などを入力する。情報を受けた「ホワイト・ジャック」は、膨大な診断・治療データを蓄積した医療データバンクにアクセスし、過去の診察履歴、想定される疾患名、発症確率、専門医が処方する薬の比率、必要な検査法などを検索・分析し、電子カルテにアウトプットする。

 医師は、患者の問診で得た詳しい症状などをさらに補足・入力すると、「ホワイト・ジャック」は、疾患名や発症確率を再び検索・分析し、さらに精確なデータを提示する。医師は得られた情報を客観的に判断し、診断を下す。

 たとえば、頭痛と微熱と訴える患者なら、「ホワイト・ジャック」は片頭痛の可能性が高いというデータをまずアウトプット。だが、医師が患者の症状をさらに詳しく入力すると、髄膜炎の恐れがあると一歩踏み込んだ結果を出してくる。実に賢い!

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