>  >  > 内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」前編
医療用ロボットの進化と挑戦・第4回

内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」が活躍する前立腺がん、食道がん、胃がん

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藤田保健衛生大学病院(同病院のHPより

 2014年は、日本の医療用ロボットが切り拓くバイオエンジニアリングの未来にとって、エポックメイキングな1年だった。ソフトバンクがヒト型ロボットのペッパーを発表し、経済産業省と厚生労働省は介護ロボット技術の開発や新産業創出を進めている。また、内視鏡手術支援ロボットのダ・ヴィンチ・サージカルシステム(以下、ダ・ヴィンチ)への信頼と期待もますます強まっている。

 米国のインテュイティブサージカル合同会社がダ・ヴィンチを発表したのは1999年1月。2000年に米国食品医薬品局(FDA)の認証を得て以来、慶應義塾大学病院がアジアで初めて導入し、2001年から2002年にかけて九州大学病院消化器・総合外科(第二外科)が62例の胸腹部手術を行ない注目された。

 厚生労働省薬事・食品衛生審議会が国内での製造販売を承認した2009年には、藤田保健衛生大学が全国に先駆けて導入。内視鏡下手術の効率化や術後合併症の抑制などに取り組みつつ、内視鏡手術支援ロボットの有用性を内外に明らかにし、トレーニングセンターなどでもエビデンスを蓄積してきた。

 ダ・ヴィンチの導入が一気に加速したのは2012年。前立腺全摘術が先進医療に登録され、健康保険が適用されたからだ。以来、臨床事例が増え、対象疾患は、前立腺がんだけでなく、胃がん、食道がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がんなどに広がった。現在、ダ・ヴィンチは、世界で3000台以上が導入されているが、国内では大学病院を中心に約180台が実働し、日本は米国に次ぐ世界第2の内視鏡手術支援用ロボットの保有国になっている。

外科医の手にも腕にも、目にも頭脳にもなる

 数あるダ・ヴィンチの臨床事例の中から、前立腺がん、食道がん、胃がん、大腸(直腸)がん、腎臓がん、子宮がん、肺がんのケースを、2回に分けて紹介しよう。

 まずは藤田保健衛生大学医学部が取り組んでいる、前立腺がん、食道がん、胃がんだ。

 藤田保健衛生大学医学部泌尿器科の白木良一臨床教授は、「前立腺は骨盤の骨や多くの血管に取り囲まれているため、前立腺がん手術は大量の出血や直腸に穴が開くなどの合併症がある。術後も尿失禁や性機能障害を伴うなどリスクが高い。ロボット手術は、開腹や腹腔鏡手術に比べて、出血量や合併症の発生率が低く、安全性が高いので、術後の回復や退院の社会復帰が早い。ダ・ヴィンチの導入によって、前立腺周囲の血管や神経の解剖を詳しく立体的に認識でき、安全かつ確実な手術が可能になった」とダ・ヴィンチの有用性を語る。

 ダ・ヴィンチは、すでに約400例の前立腺がん手術を成功させているが、術中に輸血が必要になったケースはない。 膀胱がんや女性の骨盤内臓器脱の根治術、腎腫瘍の腎部分切除術にも応用されている。また、悪い腫瘍だけを摘除する部分切除術が多い腎腫瘍は、全摘より複雑な操作が要求されるが、小さな穴を開けるだけの簡略さが低侵襲手術につながっている。現在、先進医療の登録を申請中だ。

 1997年から、食道・胃・十二指腸などの上部消化管鏡視下手術に取り組んできたのは、藤田保健衛生大学上部消化管外科の宇山一朗教授だ。「2009年1月から、全国に先駆けて胃がんや食道がんなどの悪性疾患を対象に、内視鏡ロボット支援手術を始めた。ダ・ヴィンチは、関節機能、手振れ防止機能、三次元モニターなどを搭載しているので、再現性が高く精緻な低侵襲手術が効率よく行える」と話す。

 食道がんは、肺炎などの術後合併症が発生しやすい。合併症発生率は、米国で約46%、日本で約40%。しかしダ・ヴィンチなら、開胸せずに食道がんを手術できるので、患者への負担を減らし、合併症の抑制につながっているという。

 宇山教授は、ダ・ヴィンチで胃切除術約180例、食道亜全摘術約40例を成功。局所合併症を中心とした術後合併症の軽減や内視鏡下手術の難易度の克服など、大きな成果を残している。特に胃がん手術にダ・ヴィンチを導入する意義について、宇山教授は、術後化学療法のコンプライアンス向上を挙げる。胃がんは、進行度によっては術後に補助化学療法が必要になる。ダ・ヴィンチは、手術の侵襲度を下げ、合併症の発生率を抑えるために、化学療法における薬剤選択や実施コース数などが制限されない。その結果、侵襲度の高い開腹手術や腹腔鏡下手術に比べて、根治性が高まるのだ。

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