オートメーションが人間を駆逐する? zafira/PIXTA(ピクスタ)
人工知能(AI)がプロの棋士に勝利する時代だ。いわゆる事務職は、どんどんAIにとって代わられていくに違いない。
2015年に入り、日本のメガバンクがコールセンター業務にIBMのAI『Watson』を採用すると発表した。アメリカでは、弁護士の業務でさえ、すでに大半をAIがとって代わりつつあるという。大量の証拠を仕分けしたり、過去の判例に当たったりという仕事は、AIにピッタリだ。仕事が法廷での弁論や打ち合わせだけになれば、弁護士の数はぐっと減るだろう。
AIは休憩する必要はないし、サボることもない。愚痴もこぼさないし(人間らしくプログラムすれば可能だろう)、過労死もない(機械ゆえ壊れることはああっても)。
「正解のない問題を解決」で教育が変わる?
20世紀の日本の教育システムは、想定された「正解」を答える能力を磨き、受験・進学校・一流大学・大企業というレールを敷いた。そして、大量の事務作業や、製造現場での単純作業をこなす人材を輩出してきた。
だが、こうした人たちは、もう要らないというのである。「正解」のある仕事は、AIが人間よりもはるかに大量、高速かつ正確に行ってしまう。製造現場では、すでにずいぶん前から機械化されている。
そこで、「正解」のない問題を解決する能力を育むために東大は入試改革に着手。2016年から「タフで国際社会でも通用する力」を評価する方法を取り入れることになった。東大の入試が変われば、日本全国の教育システムも変わるかもしれない。未来を担う子どもたちにはAIと競合しない能力を得て頑張ってほしいが、社会人はどうすれば......?
いやいや、我々の脳にも可能性は秘められている。
単純作業と問題を発見・解決するための脳は、使い方が違う。これからの職場で求められるのは、正しい方法やマニュアルもない問題解決力だ。そのためには脳の働かせ方も変えなければならない。
その使い方とは、軽く一杯飲(や)って、脳をリラックスさせることだ。
「軽く一杯」がひらめきを呼び起こす?
ある研究チームが、前頭葉に損傷を受けたため重度の注意欠陥を持つAグループと、健常者のBグループに問題を解いてもらう実験をした。すると、創造性を必要とする問題では、Aグループの正解率が82%だったのに対して、Bグループは約半分の43%だったという。
この結果から導かれたのは、通常の学力試験に必要な集中力がクリエイティブな問題解決の障害になっているということだ。同様に「眠気に誘われた学生」「酔っている学生」に問題を解かせると、やはり創造性を問う問題で好成績を収めたという。
私たちが問題を解くための「集中」は、脳が必要な情報だけに集中している状態だ。たとえば、歴史問題を解いているのに、AKB48の子の名前がずらずらと出てきたら脳は収集がつかなくなってしまう。
だが、ひらめきが必要なときは、この集中力が邪魔になるというのだ。
アルコールは、口から取り込んだもののなかで脳に達することができる数少ない物質だ。血管は全身にめぐらされているが、脳の入り口には「血液脳関門」があり、有害な物質をブロックしている。分子量500以下の微細な物質、脂溶性の物質に限って通過できる。
この条件にかなうアルコールは、脳にスルリと達し、一時的に機能を「麻痺」させる。これがリラックスの正体だ。そして、脳が裃(かみしも)を脱いで、リラックスしたとき、情報の思わぬ組み合わせが実現し、ひらめくのである。
「軽く一杯いこうか!」、AIや機械には真似できない、なんとも人間らしい能力ではないか。
(文=編集部)