脳の若さはアラフィフが分岐点
研究著者であるLisa氏の見解はこうだ。
「今回の知見から結論づけてしまうのは時期尚早かもしれないが、過体重であることが認知症やアルツハイマー病などの神経変性疾患の発症リスクを高める可能性はありうる」
が、今回の研究で「肥満と老化の加速」との因果関係が証明されたわけではない。実際、①標準体重層と③肥満層の被験者を比較してみても、「認知機能の差」は見られなかったそうだ。
また、①標準体重層と②過体重層および③肥満層との間で示唆された「10年の格差」に関しては、中年期以降の被験者層でのみ顕著な相違であり、20~30代の層では認められない格差だった。
言いかえれば、ヒトの脳は、加齢に伴う体重増加で悪影響を受けやすいということだろう。
ダイエットは脳を若くする?
厳密にいえば、現時点でBMI(体格指数)の増加と白質量の減少がどのうような関連性を持っているのかが明らかにされたわけではない。Lisa氏自身も「過体重や肥満であることが脳の変化をもたらすのか、逆に脳の変化が脂肪細胞を増やしているのか、それは不明である」と認めている。
興味深い成果と評している米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院のYvette Sheline氏も、内臓脂肪や皮下脂肪等の「脂肪の分布」や、経時的追跡の研究ではない点で「限界のある知見であること」を指摘している。
さて、過体重の域に属する人の場合、最も気になるのが「もし、今から努力して減量すれば、脳への悪影響は軽減できるか?」という点だろう。Lisa氏の回答はこうだ。
「それを減らせるかどうかも結論づけるのは難しく、今後検証していきたい」
古い畳と女房は……いや、脳だって若いに越したことはない。もしもアナタが中年太りしてきた自分への言い訳に「見た目よりも中身で勝負!」とか思っているなら、なおさら考えを改めるべきかも。ダイエットは脳から若くする、のだから。
(文=編集部)