わずらわしい透析治療の時間から開放。「装着型の人工腎臓」が実現間近に?

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人工透析でQOLはおおきく損なわれてしまう(shutterstock.com)

 毎週3回、4~5時間の治療は大きく生活をかけてしまう。しかし、わずらわしい機械から透析患者が解放され、「装着型の人工腎臓」をつけて日 常生活を送れるようになる日も近いかもしれない。今回、臨床試験 で、この 技術が実現に近づきつつあることが示唆された。

 「臨床試験が開始されたという事実は、透析を必要とする患者のケアの質が飛躍的に向上する可能性を示唆している」と、米レノックスヒル病院 (ニュー ヨーク市)のMaria DeVita氏(今回の研究には参加していない)は述べている。

 腎臓病が進行し、透析療法が必要になると、機械に血液を通し、血液中の老廃物や不要な水分を除去して血液をきれいにするために、患者は医療機関を頻繁に訪れなければならない。そのため、日常生活を過ごしながら透析できる携帯型デバイス(装置)の開発は、長らく夢とされていた。

食事制限も必要の無い携帯型人工透析デバイス

 今回、米ワシントン大学医療センター(シアトル)において、7人の透析患者を対象に、携帯型人工透析デバイスの臨床試験が行われた。研究は、装置を開 発した米シーダーズ・サイナイ医療センター(ロサンゼルス)のVictor Gura氏 が主導したもので、患者はこのデバイスを最大24時間使用し、装着型の人工腎臓が機能不全となった腎臓にかわってどこまで機能するのかを検討するよう計画された。

 その結果、このデバイスは、老廃物である尿素、クレアチニン、リンのほか、過剰な水分や塩分も除去できることがわかった。また、血液循環への影 響はなく、重篤な有害事象も認められなかったことから、忍容性が高いことも判明したと、同氏は説明している。さらに、標準的な透析療法では、血中電解質を安定化するため食事制限が患者に課せられるが、この試験では、患者が何を食べても 問題は生じなかったという。

 同氏らの研究グループは、装着型の人工腎臓は「実現可能だとしているが、 この試験中に生じた機器の不具合を解消するため、設計の改良が多少必要だとも述べている。たとえば、透析液中に生じる過剰な二酸化炭素の生成などが課題としてあげられるという。

 一方で、慎重な意見があるのも事実だ。「装着型の人工腎臓の開発は長年論じられてきた」とする米ノースウェル・ヘルス・サウスサイド病院 (ニューヨー ク州)のRobert Courgi氏は、「この技術革新が臨床試験で実現に近づくのを目の当たりにして興奮しているが、技術面の課題は多く、現時点では従来の透析療法が標準となるだろう」と述べている。

 なお、このデバイスの目的は、患者が家庭で透析ができるようにすることにあり、今後の設計変更は、使いやすさや安全性を重視したものになるという。こ の知見は「JCI Insights」6月号に掲載された。

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吉田尚弘

藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。慶應義塾大…

堤寛