熊本地震で生命の危機に直面している透析患者たち~東日本大震災での患者移送の経験

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大量の水が必要な人工透析shutterstock.com

 まず、熊本地震で亡くなられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

 5年前の東日本大震災では、いわき市においては市内全域にわたり断水が発生した。それに引き続いて福島第一原発事故が起きたため、市民の市外への避難と放射線風評被害による物流のストップのために、いわき市では透析の実施が困難になった。透析を行うためのスタッフと水、医療物資が手に入らなくなったためである。

透析患者だけを特別扱いできないという行政の対応

 そこでわれわれは、苦渋の選択として、透析患者を市外に移送し他県で透析を行っていただくことを選択した。この移送に際して、透析患者の受け入れ先への依頼や移動手段、現地での宿泊施設の用意など全て、常磐病院が属するときわ会グループのメンバーが個々人の知己を頼り手探りで確保した。当初は、正攻法でいわき市や福島県に依頼し、いわき市ではもはや透析が実施できないことを訴え救済を求めた。当時、各行政機関では原発事故で非常に混乱した状況でもあり、透析患者だけ特別に救済措置を施すことはできないとの理由で対応してもらえなかった。

 ところが、透析患者は透析をしなければ死を意味するため、われわれは一刻も早い患者の移送を模索した。大学関係者や病院関係者、政治家等、様々な方々に援助を求めた。そうしたところ多くの方の支援で、東京、新潟、千葉で透析患者を受け入れていただく施設を確保できた。また千葉県亀田市では、ときわ会グループの老人福祉施設の入所者も受け入れていただいた。移送手段や宿泊所も紆余曲折はあったが、なんとか確保することができた。そうして震災発生から6日後の3月17日に総勢584名の透析患者の移送を実施することができた。この移送に関する詳細はMRICで既報であり、以下の文章を参考にしていただきたい。

・Vol.109 老健疎開作戦(第4報)-被災から疎開までの経緯
・Vol.404 東日本大震災透析患者移送体験記

 われわれの透析患者移送の経験から、震災で混乱した状況下で行政は、透析患者だからといって特別扱いしていただけない可能性があることに注意が必要と思われた。透析患者が透析を行わない=生命の危機ということが一般の方が知らないのも当然で仕方がないことかもしれないが、当時こちらがそのことを丁寧に説明しても行政側がなかなかご理解いただけなかったのが残念であった。

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